2006 Fiscal Year Annual Research Report
外生菌根菌における宿主特異性の進化と種分化について
Project/Area Number |
06J02708
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 博俊 京都大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 外生菌根菌 / 隠蔽種 / 相利共生 / 宿主特異性 |
Research Abstract |
樹木と相利共生関係にある外生菌根菌は形態形質が単純なため、隠蔽種(形態形質では違いがないが互いに生殖隔離されている種)が多数存在すると考えられる。外生菌根菌は一般に宿主樹木への特異性はほとんどないと考えられている。しかし、従来の研究では、隠蔽種を混同していたために宿主特異性を過小評価していた可能性が高い。この仮説を検証するために、本年度の研究では、DNA塩基配列を解読することで、外生菌根菌オニイグチ属についてその隠蔽種探索を行い、同時にその宿主特異性の評価を試みた。オニイグチ属は、日本産記載種が4種知られているが、いずれの種も宿主特異性は低いとされている。オニイグチ属の菌子実体について、核・ミトコンドリアのDNA塩基配列を解読したところ、この属は最低でも14のDNAタイプに分けられることがわかった。さらに、菌根のDNA塩基配列の情報に基づいて宿主樹木の同定を行ったところ、1つのDNAタイプのみがマツ科およびブナ科樹木を宿主としていたのに対し、他のDNAタイプはブナ科樹木のみを宿主としていた。このことは、これまでこの属では隠蔽種を混同していたために宿主特異性を過大評価していたことを支持する結果である。さらに、3つのDNAタイプの共存する京都の吉田山集団について、これらが本当に互いに生殖隔離された集団なのかを検証するため、2つの核シングルコピー領域でPCR-RFLP解析を行った。この結果、DNAタイプ間の遺伝子流動は完全に絶たれているが、DNAタイプ内では任意交配が起こっていることが示され、これらのDNAタイプはそれぞれ独立した生物学的種であることが支持された。
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Research Products
(1 results)