Research Abstract |
本年度は,以下の2つの点に注目した研究を行い,次のような成果が得られた. 1:比喩理解のプロセスに関する検討 質問紙及び多変量解析などを用いた手法により,比喩表現の理解の構造についての検討を行った.その結果,親しみのある表現ほど,個人内で多くの解釈が産出されるということが示された(平・中本・楠見,2007).こうした結果を受け,文章読解パラダイムを用いた実験的手法により,比喩表現が,解釈文の読み時間に与える影響についても検討を行った.その結果,親しみのある比喩は,文章の中でも比喩と関わるような文全ての読み時間を促進させる一方で,親しみのない比喩は,文章の中で特に想起可能性の高い文のみ読み時間を促進させるということが示された.この研究成果により,比喩の理解がどのように行われているかだけでなく,比喩理解による知識の構築や詩的効果についても言及することが可能となる. 2:同義語の使い分けが生じる要因についての検討 同義語の使い分けを規定する認知的要因を検討する目的で,京都大学人間・環境学研究科の野澤,横森らと共同研究を行った(平・横森・野澤・森本,2007他).この研究では,言語使用者の状況に対する認知が,同じ意味を表す2つの語の選択に,直接的に影響を与えることを明らかにした.本研究の成果や方法論をもとに,次年度以降「比喩がなぜ使用されるか」ということについて,字義通りの表現と対応する形で研究をすすめていく予定である.
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