2006 Fiscal Year Annual Research Report
擬二次元三角格子反強磁性体における量子臨界現象としての非従来型スピン状態
Project/Area Number |
06J03191
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
南部 雄亮 京都大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 幾何学的フラストレーション / 擬二次元三角格子反強磁性体 / 不純物効果 |
Research Abstract |
幾何学的フラストレーションと低次元性が引き起こす新奇な量子状態への興味から、擬二次元三角格子反強磁性体NiGa_2S_4を研究している。この物質は磁化率、比熱、中性子回折の結果から0.35Kまで磁気的長距離秩序が存在しないにも関わらず、低温での比熱の振る舞いは温度の二乗に比例し、二次元スピン系におけるコヒーレントな線形分散が存在していると考えられる。今年度は以下のような研究を行い、興味深い結果が得られた。(1)NiGa_2S_4の低温相の機構や不純物に対する応答を調べるため、Niサイトの非磁性不純物効果について研究した。NiGa_2S_4で見られるコヒーレンスは不純物に対して非常に敏感であることが判明した。しかし、不純物に対して比熱の温度の二乗に比例した振る舞いは消えず、物理量がワイス温度だけで規格化できることからゴールドストーンモードの存在が示唆された。磁気的長距離秩序とバルクでの従来型のスピングラスフリージングは存在しないため、新奇な対称性の破れが存在する可能性が高い。この結果は"研究発表"の[雑誌論文]1,2,6に報告した。(2)他の元素で置換する様々な不純物効果についても研究した。非磁性不純物置換では強固に残っていた比熱の温度の二乗に比例する振る舞いが、導入した不純物のスピンのサイズによって系統的に変化することを確認した。このようなスピンのサイズに依存する状態としては擬一次元のハルデーン系がよく知られている。我々の結果は、擬二次元系でも同様なことが起こっている可能性を示唆している。この結果は現在投稿準備中である。(3)国内、海外に渡って核四重極共鳴、中性子回折、μSR([雑誌論文]の3)、光電子分光などの共同研究を推し進めるために、多結晶、単結晶の提供を行った。その結果の中でも、核四重極共鳴の実験では、核スピン緩和率の発散的振る舞いからスピンが静的な短距離秩序を形成していることが示唆されており、NiGa_2S_4のスピンが新奇な状態にある可能性が考えられる。この結果は現在投稿準備中である。
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Research Products
(6 results)