2007 Fiscal Year Annual Research Report
「抱き」を介した情報収集の技法化-乳児保育と育児支援のための教育・測定ツール作成
Project/Area Number |
06J04749
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
西條 剛史 Waseda University, 国際教養学術院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 発達心理学 / 抱き / 抱きやすさ |
Research Abstract |
「抱き」を介した情報収集の技法化に向けて、子どもの行動と抱き心地の関連性についての発達的検討が必要であると考えたため、質問紙を作成し、生後1ケ月から12ケ月の子どもをもつ母親への質問紙調査を実施した。そこで得られたデータから立位時,座位時,授乳時における「抱きやすさ(抱きにくさ)」「しっくり感(しっくりこない)」「重たく感じる(軽く感じる)」「じっとしている(動いている)」といった側面に着目し発達的にどのように変化していくのかをMutenによる潜在クラスモデルを用いて分析することとした。この分析方法は、あらかじめ決められた既存のカテゴリに基づく分析ではなく、事後的に群のカテゴリ(以下、クラス)を決定する分析方法である。手続きとしては、いくつかの分析対象となる変数を指定し、データに多変量正規分布を仮定するすることで、クラスを確率的に決定するものである。潜在クラスモデルは、クラス間の変数ベクトルの差異が最大化するように、クラス分類をするため、例えば、同じ月齢時期に違った発達過程を経るような複数の群が存在する場合でも、それらの差異を潜在クラスとして発見できる可能性がある。推定された8つのクラス別に、月齢、体重、身長の平均値を求め、さらに群別の人数を推定した。その結果を発達軸に沿って解釈すると以下のようになった。 【2・3ケ月齢】立位時にじっとしており、座位時も抱きやすい点で共通するが、授乳時に個人差がみられる。授乳中しっくり感じる群 (34人、2.3ケ月)、重たく感じる群(17人,2.1ケ月)に分かれた。【4・5ケ月齢】先の2群がそれぞれ変化した時期に相当すると考えられる。前者(授乳時しっくり群)は授乳時・座位時ともに、抱きやすいまま、乳児が立位時にアクティブになった群と解釈される(41人、4.6ケ月)。一方で後者(授乳時抱きにくさ高群)は、座位時の抱きにくさが増加しており、抱きにくい時期と推測される(28名、4.4か月)。この時期、もっとも対照的に分かれる時期ともいえる。【6・7か月】先の2群との連続性が確認できない点で解釈が難しいが、ひとつの群は、授乳時にしっくりし、座位時に抱きにくい、立位時にじっとしている(56人、6.7か月)群であり、もうひとつの群は、授乳時に重たく感じ、座位時の抱きやすさが高く、立位時にアクティブ(20人、7.5か月)であることが示された。10ケ月以降の2群とは連続性が仮定できる。【10ケ月以降】乳児が活発になるためか、座位時の抱きやすさが低下し、立位時にアクティブとなる点が共通する。唯一、授乳中にしっくり(68人、10.6カ月)感じるか、重たく感じる(34人、11.4ケ月)にのみ違いがみられる。 年齢を分析対象に使っていないにも関わらず、このように年齢区分がはっきりした結果が得られたことは、一定の発達的変化のパターンが見出せたといえることから、養育者が子どもの成長に応じて抱きを媒介とした情報収集をする際のヒントを提供する基礎資料となりうると考えられる。
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Research Products
(2 results)