2006 Fiscal Year Annual Research Report
社会的合理性と個人的合理性を結ぶ意思決定過程の心理学的基盤の解明
Project/Area Number |
06J05491
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中村 國則 東京工業大学, 大学院社会理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 意思決定 / 個人合理性 / 社会的合理性 / 論理的推論能力 / 最後通告ゲーム / 確率推論 |
Research Abstract |
初年度に当たる今年度は、(1)個人合理性と社会合理性の関係の分析、(2)確率推論に焦点を当てた個人合理性の分析、の2点に関する基礎的なデータの収集につとめた。(1)に関しては、主として論理的推論課題としてWasonの4枚カード課題、社会的意思決定課題として最後通牒ゲームをとりあげ、両者の関係を検討した。その結果、最後通牒ゲームにおける一般的な合理解からの逸脱として知られる公平な配分の比率は、Wason課題で正答する被験者と誤答する被験者との間で差がないことが明らかになり、論理的推論と社会的意思決定が異なった決定過程を踏まえている可能性が示唆された。この知見は日本心理学会で発表されるとともに、東京大学で行われた若手研究会セミナーにおいて発表され、大きな注目を集めた。特に東京大学で行われたセミナーでは、論理的思考の研究で世界的に著名であるDavid Over博士の前で発表され、Over博士は本研究成果に強い関心を示した。(2)に関しては、"確実である""見込みは薄い"などの言語的確率表現に対する人の理解がどのようなものであるかを、情報理論の観点から分析した。その結果、"確実である""見込みは薄い"などの言語確率表現を受け取った際に人が感じる"情報としての有益さ"や"驚き"といった感覚が、数学的な情報理論から導かれる予測と極めてよく一致することが明らかになった。このような知見は、日常場面における個人の確率的推論が、情報を評価するという側面について極めて合理的であることを示すものであるといえる。来年度はこの成果を踏まえ、より広範な課題を用いて論理的推論と社会的推論の関係を検討するとともに、日常場面における人間の思考の合理性を明らかにし、そのような合理性がどのような社会的基/}ゴ盤を有しているのかを検討したい。 関連する成果 中村國則(投稿中)"十分にありえる"方が"見込みがない"より意味があるか?言語確率の情報量の定量的分析とその情報理論的解釈認知科学 Nakamura, K. (2007)Why is "Quite Certain" More Informative than "Slight Possibility"? Information Theoretic Analysis of the Informativeness of Probability Statements. Nakamura, K., & Yamagishi, K. (2006)Which Is More Probable-"25%+25%"or"40%+10%"?: Effect of the Distribution of Focal Outcomes on Gut-level Perception of Certainty. Proceedings of the Twenty-Eighth Annual Conference of the Cognitive Science Society. 2006年7月.(口頭) 中村國則 合理的な人間は公平か?〜最後通牒ゲームと合理的思考〜日本心理学会第70回大会(ポスター)
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Research Products
(2 results)