2006 Fiscal Year Annual Research Report
巨大有機分子ナノクラスターにおける構造相転移現象の解明
Project/Area Number |
06J06012
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
安藤 直人 慶應義塾大学, 大学院理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | クラスター / 負イオン光電子分光 / 芳香族分子 / 電子状態 / 幾何構造 / アズレン / アントラセン / ホールバーニング |
Research Abstract |
本年度は、有機分子ナノクラスターの構造相転移現象を解明するために以下の研究を推し進めた。 1.アズレンクラスター負イオンの光電子分光 これまでのナフタレンクラスター負イオンの光電子測定によって、27量体以降のサイズで結晶化を示す状態が確認されている。そこで、ナフタレンの構造異性体である7員環と5員環が縮合したアズレン分子を対象として、クラスター負イオンの光電子測定を行った。アズレン分子は比較的大きな双極子モーメント(〜1D)を有しているため、アズレンクラスター負イオンでは双極子に支配されて結晶化に近い秩序構造を有する状態が観測されるものと予想したが、ナフタレンで観測された結晶化した状態は観測されなかった。この結果は、分子の対称性が結晶化したクラスターを生成するのに重要な役割を果たしていることを明らかにした。 2.ラマンシフターの作製とホールバーニング光電子分光法への適用 ホールバーニング光電子分光法におけるホール光は、負イオンの余剰電子を強力に脱離する必要があるため、高出力のYAGレーザーの基本波や高調波を使用してきた。アントラセンクラスター負イオンの光電子測定により、結晶化を示すスペクトルピーク値が1.47eV(843nm)でありかつ共存する異性体のエネルギー差が0.5eV程度とエネルギー間隔が狭い場合、使用できるホール光がYAGレーザー光には存在しないため、ホールバーニング光電子分光法の適用が不可能であった。そこで、YAGレーザー以外の波長かつ高強度の光を得るため、水素分子のラマン散乱を利用したラマンシフターを作製した。ホール光はYAGレーザーの第二高調波のストークス(683nm)及び反ストークス(436nm)光を用いた。光強度を得るため、散乱の変換効率の高い後方散乱法を用い、水素ガスを高圧に充填し、レーザーの集光条件の向上を図った結果、非常に高い変換効率を実現した。
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Research Products
(1 results)