2006 Fiscal Year Annual Research Report
E.フッサールを中心とした初期現象学における言語論・事態論の再検討
Project/Area Number |
06J06045
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
植村 玄輝 慶應義塾大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | フッサール / 初期現象学 / ライナッハ / 言語哲学 / 命題 / 事態 / 超越論的観念論 / 作用 |
Research Abstract |
修士課程の研究テーマを引き継いだ,フッサールの言語論についての研究として,論文「実的なものの現象学の限界:命題のスペチエス説はなぜ放棄されたのか」を雑誌『フッサール研究』から公刊した.本論文は,修士論文の成果の一部を報告する前年度のフッサール研究会での発表を下敷きに,フッサールの『論理学研究』の再検討という今年度の研究の成果を盛り込んで作成されたものである.本論文において,フッサール現象学における言語哲学および命題論の重要性と,それらが抱える諸問題とが明らかにされた.とりわけ重要な成果は,命題論上の立場変更という比較的狭い範囲のトピックが,フッサール現象学の中心問題である超越論的観念論と深い関連にあることを示した点にある.なおこの点は,今年度になされた研究の成果の一部である.また,今年度のその他の成果をふまえ,すでに明らかにされた問題への対応についての論を含む論文二篇を,現在準備中である. フッサールと初期現象学の関係についての研究の成果として,研究発表「内世界的な出来事としての作用:ブレンターノ,フッサール,ライナッハ」が日本現象学会(2006年11月11-12日,於慶應義塾大学)において発表された.本発表は,言語の発話に関する初期フッサールの立場の困難と中期におけるその克服を,ライナッハからの批判と影響を視野に入れつつあきらかにする初めての試みであり,フッサール現象学の基本概念である「作用」についての根本的な見直しを提言している点で,今後の実り豊かな展開が期待できるものである.また,同発表の縮約版である論文(タイトルは発表と同名)が現象学会の学会誌『現象学年報』に投稿され,採用が決定している.同論文は来年度中に公刊の予定である.
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Research Products
(1 results)