2006 Fiscal Year Annual Research Report
生体由来分子とナノカーボン物質の親和性に基づくナノデバイスの創製と評価
Project/Area Number |
06J06374
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
嶋田 行志 名古屋大学, 大学院工学研究科, 特別研究貝(PD)
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Keywords | カーボンナノチューブ / トランジスタ / ラマン分光法 / 熱伝導 / センサー |
Research Abstract |
研究遂行の初年度は、ナノカーボンセンサーデバイス構築のための基礎技術開発、様々なナノカーボン構造を作成可能なドーピング用高真空ライン、ならびに基礎特性測定のための試料作製技術の確立を目指した。本課題の分野で先駆的業績を挙げているいくつかの研究グループの中から、アメリカ合衆国カリフォルニア州スタンフォード大学化学科Hongjie Dai教授の研究グループを海外渡航研究先に選定し、上記を目指す実験、研究を遂行した。 渡航先研究グループでは、合成条件の適正化によって、石英基板平面上における向きのそろったナノチューブ合成を高収率かつ均一で行うことに成功している。このような配向したナノチューブ試料においてはラマン散乱の偏光依存性を測定すると、ラマンピークごとに様々の依存性を示すことが知られており、当該試料も偏光依存性を確認できたが、既存の報告では見られない振る舞いを示したラマンピークも存在した。試料の配向性自体は、合成条件でランダムにすることができる。そこで、配向状態に依存した各ラマンピークの偏光依存性を測定し、1.ナノチューブ試料の配向状態に依存して、G+ピークとG-ピークの偏光依存性が異なること、2.ストークスシフトとアンチストークスシフトとで、配向した試料では違いが見られないのに対し、ランダムな試料ではGバンドの形状が異なることがわかった。このことは、例えば、ストークスシフトにおけるG+/G-比がアンチストークスシフトのそれより大きい場合は、アンチストークスシフトのラマン散乱課程における共鳴条件が金属的なナノチューブを励起する条件に近い状態に有ると読み替えられる.すなわち、配向性の高い試料ほど金属的なナノチューブは少なく、半導体的なナノチューブが含まれていることが示唆される。共鳴励起条件を変えるために、励起光源となるレーザーの波長を変えると、配向試料はG+/G-比に大きな変化をもたらさないのに対し、配向していない試料はG+/G-比に大きな差をもたらす。このことからも、上記のことは支持されていると考えている。 このようなナノチューブ試料の導電性の作り分けが、基板上の薄膜で実現できたことは、センサーデバイス応用には不可欠なものになるだろうと期待している。 一方で、様々なナノカーボン物質の基礎特性を知ることは、ナノカーボンセンサーデバイスに用いる素材のデザインという観点から、極めて重要である。今回、渡航先研究機関内に、熱伝導特性を測定するに長けた研究グループとの間で、意見を交わすことができ、その測定を共同で開始することとした。現在、熱伝導特性を正確に測定できる試料作成の条件出しを行っている。
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