2006 Fiscal Year Annual Research Report
有機物質専用高分解能逆光電子分光装置の開発と機能性有機薄膜の非占有状態の直接観測
Project/Area Number |
06J06488
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西 寿朗 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 逆光電子分光 / 光電子分光 / X線発光分光 / 有機半導体薄膜 / イオン液体 / 電子構造 |
Research Abstract |
空準位を調べる手法として光電子分光法の逆過程である逆光電子分光法(IPES)がある。物質の空準位の直接観測は、電子輸送などの基本的な物性の理解のために必要不可欠である。そこで、電子線による試料の損傷を抑え、かつ高分解能なIPES装置の開発を行った。開発した装置を用いて、フタロシアニン、TPD、TNAP等の有機薄膜、イオン液体の空準位の電子構造に関する研究を行った。 特に、イオン液体についてはUPS、XPS、軟X線発光分光法(SXES)、および理論計算も用いて、占有準位、空準位の電子構造の詳細を決定した。イオン液体とは常温で液体状態である塩のことであり、非常に低い蒸気圧、高いイオン伝導性などの優れた特徴を持ち、様々な分野での応用が期待されている物質のことである。特に電気化学等への応用を考えた場合、エネルギーギャップ近傍の電子構造の情報が非常に重要である。本研究では、[C_nmim]^+X^-([C_nmim]^+=1-alkyl-3-methylimidazolium, X^-=BF_4^-,PF_6^-,Br^-,CF_3SO_3^-,(CF_3SO_2)_2N^-)というイオン液体について研究を行なった。イオン液体は陽・陰イオンの二成分系から成り立っているために、UPS、XPS等の光電子分光法、理論計算からだけでは陽・陰イオンの電子構造への寄与を分離するのが難しかった。そこで、SXESで部分状態密度を調べることで、各成分の寄与を初めて明瞭に分離した。また、IPES測定ではイオン液体の空準位電子構造の初の実測を実現した。この結果、BF_4^-やPF_6^-を陰イオンとするイオン液体では、エネルギーギャップが陽イオンのみで決定されていることが明らかになった。一方、その他のイオン液体では、価電子帯上端は陰イオン由来であることがわかり、イオンの組合せを変えることで価電子帯の性格を制御できることが明らかになった。
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Research Products
(1 results)