2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J09976
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若野 友一郎 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 同調伝達 / 環境変動 / Adaptive dynamics |
Research Abstract |
社会学習は、個体学習者が試行錯誤のコストを払って獲得した適応的行動を少ないコストで真似するという意味で、社会寄生行動の一種であると考えられる。このような行動の進化を議論するためには、ゲーム理論を用いた数理的解析が有用であると考えられる。しかし、社会学習の起源の問題は、古くから議論されているものの、数理的な研究はまだそれほど多くはない。我々はすでに、3戦略モデル(遺伝的行動決定戦略、社会学習戦略、個体学習戦略)を提案し、それを数理的に解析した結果、環境変動の周期に応じてそれぞれ異なる戦略が進化することを示している(Aoki et al. 2005,Wakano & Aoki 2005)。しかしながら、社会学習と個体学習は必ずしも排他的な戦略ではなく、ヒトは行動決定において2つの学習戦略を使い分けている。そこで本研究では、個体は確率Kで社会学習を、確率Lで個体学習を、確率1-K-Lで遺伝的に決められた行動決定を行うモデルを提案した。このモデルは、人類進化の初期の段階において、遺伝的行動決定に頼る割合が徐々に減少し、社会学習や個体学習に頼るように進化していった過程を再現できることが特徴である。Adaptive dynamicsを用いた解析の結果、次のことを明らかにした。 (1)環境変動の周期が短いときに、学習戦略が進化する (2)このとき、社会学習と個体学習は適当な割合で共存する。環境変動の周期が短いほど、個体学習への依存が強くなる (3)ひとたび学習戦略が進化すれば、その後再び環境が安定となっても、遺伝的な行動決定には戻らない このうち、(1)(2)は先行研究の結果と一致し、(3)が本モデルによって初めて明らかになった部分である。
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Research Products
(2 results)