2008 Fiscal Year Annual Research Report
生物群集の再帰的な放散と絶滅における生態的要因の理論解析
Project/Area Number |
06J10112
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 洋 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 食物網 / 進化的分岐 / 適応放散 / 適応動態 / トレードオフ / 捕食被食相互作用 / 共進化 / 栄養段階 |
Research Abstract |
本研究の食物網進化モデルでは、1種の祖先種が進化的分岐を繰り返すことで出現した多数の種が複雑な食物網を構成し、それらが捕食被食相互作用を通じて共進化する。本研究はこの進化動態全体を、あたかも共食いする1種の方向進化であるかのように解釈し解析する手法を開発し、(1)捕食者戦略の資源利用パターンとしての進化的自由度が十分に高い場合には、その被食者戦略と捕食者戦略が進化的平衡となり得るのはそれらの戦略同士の関係が理想自由分布に近く、機能の反応がratio-dependent型であること、及び(2)そのような平衡点は、被食者戦略については進化的不安定であること、を導いた。すなわち、進化的に安定な平衡状態は存在せず、捕食被食相互作用を通じた群衆の共進化動態は(たとえ停滞することはあっても)停止しない。この「停止しない」という結果は、タイプII型や他の機能の反応についても導くことができる。本研究は既に、複雑な食物網を持つ群集が成長するのは捕食者と被食者の関係が理想自由分布に近い状態が維持される場合であることを示しているが、本研究はさらに、生物群集にみられる生態的・生理的トレードオフが、この特性と関わりがあることを示した。これは以下のように説明される。理想自由分布に近い状態は、群集を構成する種の間で、潜在的競争力が似ていることに対応する。似ていない場合には、相対的に強い種が他の種を排除しながら放散し、結果的に競争力の似ている種群による群集が構成される。進化動態を通じて競争力が似ている状況とは、競争力に影響する形質の進化は遅く、進化の速い形質は競争力に影響しない状況である。すなわち、競争力に影響する遅い形質がトレードオフの関数形を与え、種同士の多様性は、進化は凍いが競争力に影響しない形質において生じていると考えられる。
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Research Products
(2 results)