2006 Fiscal Year Annual Research Report
南極氷床コア中「塩素-36」の高精度,高解像度測定による地磁気逆転イベントの評価
Project/Area Number |
06J11358
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿瀬 貴博 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 加速器質量分析 / Cl-36 / 氷床コア |
Research Abstract |
本年度は氷床コア中の^<36>Clをより高精度に測定するために、東京大学工学系研究科原子力国際専攻タンデム加速器研究部門に設置されているタンデム加速器の測定システムの見直しを行った。妨害となる^<36>Sを抑制し、バックグラウンドレベルをより低下させるために、AMSコース終端部に設置された気体充填型電磁石内のイオンの軌道をシミュレートした結果、計算結果は実験結果を非常によく再現することが確認された。計算結果から気体充填型電磁石の最適条件を検討した結果、^<36>Cl/Cl比で10^<-15>レベルのバックグラウンドを達成した。 また、加速エネルギーは低下するが、従来の7価の正イオンより生成率が3倍に向上する6価を分析電荷として用いた高効率測定システムの可能性について検討した。延べ数百時間に及ぶ加速器のコンディショニングを行った結果、定常的に加速電圧を定格の5MV近傍で維持することができるようになり、加速エネルギーが向上した。また、気体充填型電磁石の入り口の膜を、よりエネルギー散乱の少ない窒化ケイ素膜に変更することで加速エネルギーが低い6価を用いても最終検出器において従来の測定に匹敵するエネルギーを得ることができた。その結果、加速電圧を定格の5MV程度にすることで従来よりも優れた測定効率を達成できる事が確認された。 実際に、南極ドームふじで掘削された氷床コア中の^<36>Clを100サンプル程度を測定し、核実験起源の巨大ピークを含む、過去900年間に及ぶ氷床コア中の^<36>Cl濃度変動の記録を得ることができた。南極ドームふじ氷床コア中の核実験以前の^<36>Cl濃度は、氷1gあたりおよそ5000〜20000atomsであった。
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