2006 Fiscal Year Annual Research Report
新規リン脂質分解酵素ホスホリパーゼA_1のノックアウトマウスを用いた生理機能の解明
Project/Area Number |
06J11607
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 飛鳥 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | リゾホスファチジン酸 / 着床 / mPA-PLA_1α / 生理活性脂質 |
Research Abstract |
リゾホスファチジン酸(LPA)はリゾリン脂質骨格を有する生理活性脂質であり、Gタンパク質共役型受容体を介して作用する。これまでに、LPA_<1,2,3,4,5>の5種類のLPA特異的受容体が同定されており、遺伝子欠損(KO)マウスの解析からLPAの個体レベルでの機能が明らかになりつつある。LPA_1およびLPA_2は脳神経系の発達に関与することが報告され、さらに当研究室ではLPA_3が着床過程を制御することを明らかにしている。着床部位近傍におけるLPA産生酵素の候補として、私はこれまでにmPA-PLA_1αを同定している。博士課程では、KOマウスおよび過剰発現(TG)マウスを用いて、本LPA産生酵素の生理機能の解明を目指して研究を行っている。 採用初年度は、mPA-PLA_1αの高発現が受精卵の着床に与える影響について、TGマウスを用いて検討した。CMVプロモーターの制御下で全身性に高発現するTGオスマウスを、5週齢から10週齢までの野生型メスマウスと交配させて着床痕を観察したところ、5週齢のメスマウスにおいてのみTG受精卵はWT受精卵に比べて有意に着床率を増加させることが観察された。この5週齢のメスマウスの子宮でのLPA_3発現量は8週齢に比べて顕著に低下していた。さらに、受精卵は内在性にmPA-PLA_1αを発現していることを免疫蛍光染色法で確認している。以上の結果は、受精卵に発現しているmPA-PLA_1αがLPAを産生し、LPA_3を介して受精卵の着床に関与することを示唆している。 また、mPA-PLA_1α KOマウスを最近作製したが、LPA_3 KOマウスで生じる着床異常は観察されなかった。意外なことに、mPA-PLA_1α KOマウスは体毛に異常が生じることを見出しており、次年度以降は発毛過程における新たなLPAの機能について、より詳細な解析を進めていく予定である。
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Research Products
(3 results)