2006 Fiscal Year Annual Research Report
王朝物語享受資料のデータベース化と享受ネットワークの解明についての研究
Project/Area Number |
06J11733
|
Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
小川 陽子 国文学研究資料館, 文学形成研究系, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 中世王朝物語 / 物語目録 / 古注釈 / 書き入れ / データベース / 享受 / 文化圏 / 源氏物語 |
Research Abstract |
本年度は王朝物語享受資料のデータベース化に向けての基礎作業期間として、(1)各種物語の現存諸本、(2)近世期成立の物語目録類、(3)中世から近世の過渡期における物語享受資料を中心として資料の調査収集を行なった。 (1)はなお中途であるが、今年度収集したうち特に注目される文献として、ノートルダム清心女子大学蔵『海人の刈藻』、蓬左文庫蔵『雲隠六帖』が挙げられる。前者は大阪の町人学者入江昌喜による注が多く存するもので、周辺資料を併せ見ることによって従来知られていた国学者サークルの圏外でも物語が享受されていたことを具体的に跡づけ得る。後者は中世末から宝暦期に至る五段階の奥書が存し、享受圏を検証する上で欠かせない伝本と認められる。これらについては次年度に論考化する予定である。 (2)は主要な伝本の調査を終了し、ア『古話篇目』、イ『古物語類字砂』、ウ『物語書名寄』について生成過程を検証した。まずアは清水浜臣作と言われてきたが、基本は山岡湊明の目録であり、浜臣はそれを書写し一部に注を追加したと見るのが妥当と思われる。イの成立時期は未詳であったが、現存諸本及びノートルダム清心女子大学蔵『海人刈藻物語系図』の検証により、天保10年3月以降・安政3年11月以前に基本部分が成立したことが明らかとなった。ウは狩谷液斎の娘・多佳子作、岡本保孝補訂とされてきたが、実際は本多忠憲の『物語目次』を増補したものと判明した。 (3)は主に『源氏物語』の写本書き入れ及び古注釈書を取りまく環境について考察した。近世期の物語享受を考える上でその前段階としての中世末期に関する検討は欠かせないが、残念なことに中世王朝物語は基本的に近世以降の享受資料しか知られていない。このため王朝物語全体の享受を考察する一階梯として『源氏』享受資料を扱ったものである。特に『紹巴抄』に関しては、初稿本と再稿本の関係及び成立時期について先行論の修正を図った。
|
Research Products
(4 results)