1997 Fiscal Year Annual Research Report
カラハリ砂漠とその植生移行帯における民族多様性に関する生態人類学的研究
Project/Area Number |
07041012
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 二郎 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (30027495)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ビーゼリー メガン ニヤエ, ニヤエ・開発基金, 所長
大野 仁美 麗澤大学, 外国語学部, 講師 (70245273)
中川 裕 東京外国語大学, 外国語学部, 講師 (70227750)
大崎 雅一 姫路工業大学, 自然環境科学研究所, 講師 (40254453)
菅原 和孝 京都大学, 総合人間学部, 教授 (80133685)
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Keywords | カラハリ砂漠 / 植生移行帯 / 民族多様性 / サン / ボツワナ / ナミビア / 人類学 / 環境利用 |
Research Abstract |
1.サンの社会関係や価値観の再編を探るため、歴史復元の基礎となる年代記を編纂し、民族集団間の交渉史の復元を行った。 2.子供の言語・身体発達と社会化の過程を、狩猟採集の衰退、平等主義の変容、学校教育の導入など「近代化」の諸問題との関連において明らかにした。 3.グイ語・ガナ語と隣接諸言語との接触史に関する資料を収集し、さらに、広域方言調査を行うことによってグイ語の方言区画を同定した。 4.鳥類約70種のサン方名語彙素を分析し、習性や形状との関係を明らかにした。鳥類に関わる民話、神話の分析より、サンの自然認識の構造を解明した。 5.現時点のセンサス、および、過去30年間の人口データより、サンの人口動態を解明した。 6.サンと農牧民カラハリの儀礼の比較分析から、いくつかの重要な儀礼は両者に共通しており、相互に影響を及ぼしていることが明らかになった。カラハリの儀礼はより呪術的要素が強い。 7.5月から7月にかけて、ボツワナ政府主導による新居住地ニューカデへの移住が突発したため、当初の研究計画に加え、移住過程の追跡と移住に伴う諸問題の解析を行った。 (1)住民約1,000人の移動順序、移動経過と定着過程の観察、および新居住地における継時的な住居地図の作成により、グイ、ガナ、カラハリの3民族集団間の住み分けの構造を明らかにした。 (2)狩猟、採集、民芸品製作など、従来の生業活動は低下し、水道管敷設など新居住地整備のための賃労働の比率が増加、貨幣経済への一層の傾斜が観察された。 (3)新居住地の環境分析、住民による環境評価、土地をはじめとする自然資源の利用、貨幣経済化に伴う交換価・値体系の変容、集住化に伴う民族集団内外の社会関係、行動様式の変化など、将来の重要な研究課題が明らかになった。 8.移住の大事件に力点をおいたため、ナミビア側での補完調査は将来にもちこされた。
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Research Products
(9 results)
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[Publications] 菅原 和孝: "会話における連関性の分岐-民族誌と相互行為理論のはざまで-" 谷秦編『コミュニケーションの自然誌』新曜社. 1. 213-246 (1997)
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[Publications] 菅原 和孝: "関係と交渉のプラグマティックス" 谷秦編『コミュニケーションの自然誌』新曜社. 1. 369-413 (1997)
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[Publications] 野中 健一: "中央カラハリ砂漠のグイ・ガナ=ブッシュマンの食生活における昆虫食の割合" アフリカ研究. 50. 81-99 (1997)
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[Publications] 今村 薫: "Technical Aspects of Gathering among the Central Kalahari San." The Nagoya Gakuin University Review,Social Sciences. 34(1). 176-186 (1997)
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[Publications] 今村 薫: "グイ・ブッシュマンにおける儀礼と治療" 名古屋学院大学論集 人文・自然科学編. 32(2). 43-83 (1997)
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[Publications] 大野 仁美: "How do the |Gui Categorize People?" 『言語研究』日本言語学会. 111. 42-58 (1997)
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[Publications] 大野 仁美: "『サカナ』カテゴリーの成員" 麗澤大学紀要. 64. 135-151 (1997)
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[Publications] 中川 裕: "Unnatural Palatalization in |Gui and ||Gana?(in print)" Proceedings of the International Symposium: Huntergatherers in Transision: Language,Identity and Conceptualization among Khoisan,Quellen zur Khoisan-Forschung.1. (1998)
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[Publications] 田中 二郎、菅原 和孝: "The |Gui and ||Gana of Botswana(in print)" The Cambridge Encyclopedia of Hunters and Gatherers. 1. (1998)