1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610475
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
武井 ナヲエ 桜美林大学, 文学部, 教授 (40226981)
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Keywords | シエイクスピア / 夢の主題 |
Research Abstract |
シエイクスピアの夢に対する態度の中で伝統に影響されている部分を明らかにするため、先ず原始時代に関して、文化人美学的資料から夢に対する人間の態度を調査した結果、殆どの原始社会や同様の精神構造を持つ社会では、夢が現実と同等かそれ以上のもの、特に神からのお告げとして神格化されたり、崇拝されたりしたことが分かった。この態度は聖書時代にも受け継がれ、多くの夢が現れる旧約聖書では、夢は直接、間接に、殆どが神に起源を持つものとされる。新約聖書でも数はすっと少なくなるが、やはり夢は神が自らの意思を人間に伝える手段として用いられる。ギリシャ時代に入ると様相はかなり変り、夢に対する態度の分化が見られる。即ち夢見手の属ずる階層によって夢の真疑を決定する夢の階層化が見られる一方で、夢を角の門から出る真実の夢と象牙の門から出る虚偽、或いは無意味の夢という両極端の分義をするようになったことが「オデュッセイア」などからうかがえるが、この後者の考え方はその後も非常に長くヨーロッパに流布した考え方の原点と考えられる。夢に対する絶対的信頼や崇敬の念は既に崩れていたのである。又夢を抑圧された欲望も充足するものとするフロイト理論のさきがけとも云える考え方がプラトンの「国家論」に見えるが、それは断片に止まり、体系的な夢理論にまで発展されることはなかった。夢についてはアリストテレスの方がより多く、2体系的に書き残しているが、彼も夢による予知の多くは偶然だとし、夢を主として生理現象とみる主知的態度をとり、原始、聖書時代からの変遷を際立たせた。CD-Romによる検索は、コンピュータ入手のおくれと、米国製CD-Romと日本製プリンターのかみ合いがうまくゆかず遅れぎみであったが、すでにかなりの数の場面や言及が収集でき、来年度には整理できる見込みである。
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