2007 Fiscal Year Annual Research Report
相対運動知覚の機能と発達に関する心理物理学的および生理心理学的検討
Project/Area Number |
07J01464
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
白井 述 Tokyo Metropolitan University, 人文科学研究科, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 知覚発達 / 運動視 / 放射運動 / 回転運動 / 脳波 |
Research Abstract |
本年度は、国内ではヒト成人と乳児、およびサル乳児を対象とした行動実験を実施した。成人を対象とした実験では、放射状の拡大・縮小運動や、時計回り・反時計回りの回転運動、渦巻運動といった複数の相対運動パタンに対する感度がそれぞれ互いに異なることがわかった(研究業績9)。すなわち、放射運動は回転運動よりも検出されやすく、さらにそれら2種類の運動検出は渦巻運動の検出よりも容易に行われることが示された。 また成人と同じく、発達初期の乳児もまた、異なった相対運動パタンに対して異なった感度傾向を持つことが明らかになった(研究業績1、5、7)。これまで、相対運動に対する感度は生後数ヶ月の間に急激に発達することが知られていたが、放射運動に対する感度は回転運動に対する感度よりも早く発達し、また同時期において放射運動感度は回転運動感度よりも有意に高いことが明らかになった。こうした結果は、成人と同様の相対運動知覚の基礎的な枠組みが生後数'ヶ月という発達の極めて初期の段階でも存在することを示唆する。また現在、ニホンザル乳児を対象とした比較発達実験を実施中であり(研究業績2)、同様の発達傾向がヒト以外の霊長類にも存在するか否かを検討する予定である。 また上記の一連の行動実験によって得られた知見について生理心理学的観点からの検討を加えるために、1月から3月にかけてロンドン大学ユニバーシティカレッジにおいてヒト成人・乳児を対象とした脳活動測定実験を行った。成人、または乳児が拡大・縮小運動や回転運動刺激を観察中の脳波を測定、分析した。その結果、上記の行動実験で見出された、異なった運動パタンに対する感度の差異や発達傾向の違いなどが、それぞれの運動パタンの処理に特化した神経的基盤が異なることによって生じている可能性が示唆された。
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Research Products
(8 results)