Research Abstract |
本研究では,現実世界を撮影した映像を用いて,その映像が撮影されたときのカメラの動き,つまりカメラの自己位置を推定・追跡することを目的としている.そして,本研究では特に,現実世界に多数存在する平面構造に注目し,それらの平面を効率的に組み合わせて用いるための手法について検討している. 今年度は,平面形状の矩形マーカを利用したカメラ追跡手法に焦点を当てて研究を行った,平面形状の矩形マーカを利用した手法では,画像中でのその矩形の写り方(見え方)によって,カメラの動きを3次元的に追跡する.このようなマーカを使った手法は,自然に存在する点や線のような特徴を画像中から抽出して用いる手法と比較して,安定かつ高速に機能するため,リアルタイムのカメラトラッキングシステムなどに広く利用されている.しかし,カメラと平面の角度によっては,平面に対して垂直な方向に関する推定精度が非常に不安定になるといった問題が以前より課題として挙げられていた.そこで本研究では,その不安定さを解消するための手法を提案した. 上記の問題を解決するために,本研究では,時系列フィルタリング手法の一つである"パーティクルフィルダ"を導入した.パーティクルフィルタとは,推定すべき変数であるパラメータの確率密度関数を,重みを持たせた離散的な仮説群で近似して表す手法である.このとき,重みを時系列情報から算出される信頼度に基づいて算出することで,前後関係を考慮した確率密度関数を定義できる.また,その重みをどのように算出するかといった工夫を加えることができる. 今年度は,矩形マーカの輪郭線情報を用いて重みを算出する手法と,輪郭線情報に加えて内部のグレースケールパターンを組み合わせて利用する手法を提案した.これらの手法を用いることによって,従来手法では不安定であったカメラ軌跡の推定結果を,非常に安定にすることができた.これは,オンラインのアプリケーションに応用する際に,非常に有用であるといえる. また,この研究について,国内および国外の学会において,数件の発表を行った,査読付きの国際会議にも口頭発表で採択され,同様の分野で研究を行っている研究者たちからも,高い評価を得ることができた.
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