2007 Fiscal Year Annual Research Report
赤外線観測に基づく原始惑星系円盤におけるダストの物理状態および進化過程の解明
Project/Area Number |
07J02823
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤原 英明 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 原始惑星系円盤 / ベガ型星 / ダスト / 赤外線観測 |
Research Abstract |
原始惑星系円盤中のダストは、惑星形成過程の出発点に位置する物質である。しかし、円盤内におけるダストの進化を支配するプロセスは未だに理解が進んでいない。特に、低温環境で生まれたはずの彗星の中に高温生成物質である結晶質シリケイトダストがなぜ存在するのか、という「彗星の結晶質シリケイト問題」は、太陽系の歴史と原始惑星系円盤のミッシングリンクを解くという点で、解明すべき問題である。そこで本研究では、原始惑星系円盤を伴うことが知られている前主系列星やベガ型星を中間赤外線で観測することで、若い星の周囲に存在するダストの性質の解明を目指している。 本年度は、まず、大口径地上望遠鏡による原始惑星系円盤の中間赤外線スペクトルデータの解析を行い、若い星の周囲にあるダストの性質とその進化を統計的に議論した。具体的には、シリケイトダストの結晶性や大きさについて制限を付け、中心星の性質との関連を調べた。その結果、シリケイトダストの結晶性や大きさと中心星の質量・温度・円盤降着率などとの間には相関は見られないことが分かった。これは、ダストの進化は中心星の進化とは独立であり、また、初期状態によって大きなばらつきを持つ可能性があることを示唆する重要な結果である。 また、ダスト円盤を持つ新たな若い天体(ベガ型星)を探査するために、「あかり」衛星に搭載された赤外線カメラIRCによる中間赤外線全天サーベイデータの解析を行った。特に、検出器の線形性応答特性の評価や補正方法の考案を精力的に行い、サーベイデータにおける天体検出の精度を高める努力をした。さらに、このようにして制約したデータに基づき、ベガ型星の初期探査を行った。その結果、高温の星周ダストに起因する波長20ミクロン付近で明るく光っている星を新たに10天体ほど検出することに成功した。これまでの観測では、波長60ミクロンよりも長い波長域で明るい低温ダストを持つベガ型星は数多く発見されていたが、高温ダストを持つものは少ししか発見されていなかった。本研究における我々のこの発見は、ベガ型星に高温ダストを持つ新たな種族が存在することを示唆しており、ベガ型星におけるダスト供給メカニズムを解明する上で、大変重要なものである。
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Research Products
(7 results)