2007 Fiscal Year Annual Research Report
温帯林の分子植物地理学的研究-第四紀の急激な分布の変遷に伴って起こった適応進化
Project/Area Number |
07J05749
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
岩崎 貴也 Tokyo Metropolitan University, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 植物地理学 / 遺伝構造 / 葉緑体DNA / 温帯林 / 日本海側地域 |
Research Abstract |
本年度はまず、ツリバナとウワミズザクラについてmRNAを抽出してExpressed Sequence Tag(EST)ライブラリを作成し、種内多型の存在するESTマーカーを十分な数だけ準備することを目的として、森林総合研究所の津村義彦博士の研究室で実験を行った。しかし、ツリバナについては実験に用いた実生の状態があまり良くなかったためか、うまくESTマーカーを作成することが出来なかった。そのため、ツリバナについてはEST由来でない通常のSSRマーカーを大量に作成することで代用することにし、現在マーカーを作成中である。ウワミズザクラについては、自分でESTライブラリを作成するのではなく、サクラ類で既に作成されているESTライブラリからマーカーを作成することにした。こちらの方が時間・研究費ともに節約できることが見込まれ、現在その方法でマーカーを作成中である。また、本年度は調査計画を変更し、新潟-群馬県境地域で5地点、九州・中国地方で8地点、関東地方で2地点の合計15地点について詳細なサンプリングを行った。その中で、新潟-群馬県境地域の5地点で採集したツリバナについて解析した結果、日本全体レベルでみられていた日本海側地域-太平洋側地域の分化はこの地域ではっきりと維持されていることが分かった。具体的には、日本海側の新潟県湯沢町の集団は全てが日本海側地域に多いハプロタイプで構成されていたにも関わらず、それ以外の地域の集団ではほとんどが太平洋側地域に多いハプロタイプで構成されていた。新潟県湯沢町と最も近い群馬県新治村の2集団は標高1300mほどの三国峠を挟んで10km程度しか離れておらず、このような狭い地域で大きく遺伝的構成が異なっていたことは非常に興味深い。
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