2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J07896
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宇野 健司 Tohoku University, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | PPARγ / 臓器間代謝調節機構 / 交感神経 / メタボリックシンドローム / 高血圧 / 脂肪肝 / 迷走神経 |
Research Abstract |
我々は、肥満の病態における肝臓の意義に着目し、肝臓からの神経系を介した新規の臓器間代謝調節機構の存在を解明した(Science 312, 1656-59, 2006)。この機構は、肥満が形成される際に問題となる余剰なカロリー摂取に対して、肝臓での代謝情報をネガティブフィードバックすることで、個体としての恒常性を維持する役割をもつと考えられる。 前年度から引き続き、この調節機構がメタボリックシンドロームの形成、特に肥満に伴う高血圧の形成にどのように関与するのか、着目し研究を続けてきた。普通食マウスの肝へPPARγ2を過剰発現すると、交感神経系の活性化を介して、収縮期血圧を上昇させた。この血圧上昇作用は、迷走神経肝臓枝を選択的に切断することにより、ほぼ完全に遮断された。また、高脂肪食誘導性や遺伝性の肥満モデル(KKAy)マウスでは高血圧を呈するが、shRNAiアデノウイルスにより内因性の肝PPARγ発現をノックダウンすることにより、収縮期血圧の上昇は抑制された。 次に、肥満の病態において肝臓での発現が増加し、PPARγの下流で発現調節される標的因子Fsp27に着目した。先と同様に、肝臓への過剰発現により、収縮期血圧は上昇し、迷走神経肝臓枝の切断により、ほぼ完全に遮断された。また、肥満モデルマウスで、shRNAiアデノウイルスにより内因性の肝Fsp27発現をノックダウンすると、収縮期血圧の上昇は抑制された。 さらに、KKAyマウスに、迷走神経肝臓枝を選択的に切断する、あるいは求心性神経線維の遮断剤カプサイシンを肝臓枝周囲に処置し、その後収縮期血圧を経時的に測定した。その結果、コントロール群に対して収縮期血圧の上昇は有意に抑制された。 また、肥満状態では高レプチン血症を呈していることから、レプチン系と神経系による血圧調節の間の相関関係を検討するため、ZDFラットを用いて、カプサイシン処置を行った。その結果、コントロールに対して、収縮機血圧の上昇は有意に抑制され、レプチン系とは独立した経路であると考えられた。 以上より、肝のPPARγ-Fsp27経路は、神経系によるネットワークを介して、肥満の際の高血圧の形成に関与していることが示唆された。 このように体内に備わった肥満からの防御機構が、持続する過栄養状態においては、高血圧の一因となる可能性が示唆され、メタボリックシンドロームの病態を理解する上で重要であると考えられる。 これらの内容については、現在、論文投稿準備中である。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Molecular Characterization of the Tumor Suppressor Candidate 5 Gene : Regulation by PPARgamma and Identification of TUSC5 Coding Variants in Lean and Obese Humans.2009
Author(s)
Trina A.Knotts, Hyun Woo Lee, Jae Bum Kim, Pieter J.Oort, Ruth McPherson, Robert Dent, Keisuke Tachibana, Takefumi Doi, Songtao Yu, Janardan K.Reddy, Kenji Uno, Hideki Katagiri, Magdalena Pasarica, Steven R.Smith, Dorothy D.Scars, Michel Grino, Sean H.Adams
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Journal Title
PPAR Research Volume2009
Pages: Article ID 867678
Peer Reviewed
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