2007 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエの翅を用いたモルフォゲン活性の勾配形成メカニズムの解明
Project/Area Number |
07J07927
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小木曽 由梨 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ショウジョウバエ / モルフォゲン / パターン形成 / BMP |
Research Abstract |
発生過程において、均一な細胞集団から特定の構造が形成される機構はパターン形成と呼ばれており、発生生物学の中心的な課題である。パターン形成においてモルフォゲン分子が重要な役割を果たすことが知られている。モルフォゲン分子は限局した細胞群から拡散し、その分子の濃度勾配に従って周辺の細胞に位置情報を与えることが知られている。しかし未だ、モルフォゲンの濃度勾配が位置情報に変換される量的な証拠は得られていない。そこで本研究では、パターン形成について多くの知見が得られているショウジョウバエの翅を用い、モルフォゲンの濃度勾配が位置情報に変換される機構を詳細に解析することを目的としている。 ショウジョウバエの成虫翅で見られる翅脈などのパターンは幼虫期に得た位置情報に基づいて構成される。BMPホモログであるDppはモルフォゲンとして働き、翅のパターン形成を担っている。Dppは幼虫期に翅の限局した細胞群で発現し、周囲に拡散して山なりの濃度勾配を描いている。周辺の細胞でDppが受容体と結含すると、Dppの濃度、受容体の発現レベルに依存して細胞内シグナルに変換され、そのシグナルレベルに依存して位置情報が決定される。本研究では、受容体の発現レベルを人工的に操作することのできる系を構築し、受容体の発現レベルの変化にともない、Dppの濃度勾配や、細胞内のシグナルレベル、そして最終的な成虫翅のパターンがどのように変化するか解析している。現在のところ、受容体の発現レベルを変化させても、成虫翅のパターンは変化しないという結果を得ている。この結果は、Dppの濃度勾配を位置情報に変換する過程で、受容体の発現レベルの変化を補正する未知の調節機構の存在を示唆している。今後は、この調節機構がどの段階でどのように作用するのか、解析を進めていきたい。
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Research Products
(1 results)