1996 Fiscal Year Annual Research Report
西欧中世大学における学位制度の成立・発展過程-十三・四世紀パリ大学神学部を中心として-
Project/Area Number |
08610293
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima Jogakuin University |
Principal Investigator |
松浦 正博 広島女学院大学, 文学部, 教授 (50116670)
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Keywords | 西欧中世大学 / 学位制度 / 中世パリ大学神学部 / 学位の階梯 / バカラリウス / 命題集バカラリウス / リケンティアートゥス / マギステル |
Research Abstract |
西欧中世大学が生み出した、一定の課程を終了した学生が試験を受け修学と学力の認定をうけるシステムである学位制度の成立・発展過程について、従来の規約に基づいて再構成された「理想像」としての学位制度ではなく、実態に則して明らかにしていこうとするものである。このことは、学位が当時の社会においてどのような意味・役割を果たすことになったのかについても理解させてくれるものと考えるからである。 以上の観点から、十三・四世紀パリ大学神学部をとりあげ、そこでの学位の成立・発展過程を考察している。パリの神学部はこの時期の上級学部(神学、法学、医学)の中では比較的史料に恵まれている。 まずその予備作業として十三・四世紀のパリ大学諸規約(1215年ロベール・ド・ク-ルソンの規約、1335年教皇ベネディクトゥス十二世の規約、1366年神学部規約)に基づいて神学部の学位の階梯(baccalarius : biblicus ordinarius,cursor,sententiarius,baccalarius formatus/licentiatus/magister,doctor)の各学位段階で求められた修学年限、履修科目、年齢等について整理した。平行して、学位取得過程の実際について学生の講義録〔フランス国立図書館所蔵マニュスクリ:写本番号lat.3074,lat.16408,lat.15652.15702〕を手がかりに明らかにしつつある。特にlat.3074は、sententiariusの講義録(1392-1393学年度)であり、講義日・内容、学位試験の有り様、学位取得時の師弟関係、学生の勉学の様子等について伝えてくれる[第40回教育史学会(1996年9月22日)において報告]。lat.16408は1350〜1366年頃神学部学生からバカラリウス、マギステルと学位を取得していった人物の講義録、個人的記録である。また、lat.15652 15702は、1242〜1247年において神学部学生の講義録である。これらの写本に記された内容を判読することにより、学位取得の過程=学位制度の一端を明らかにする。
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