1998 Fiscal Year Annual Research Report
細菌感染症におけるストレス蛋白質の役割-細胞内寄生細菌の病原性発現に関わるストレス蛋白質の機能の解析-
Project/Area Number |
08670317
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
山本 友子 杏林大学, 医学部, 助教授 (60110342)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花輪 智子 杏林大学, 医学部, 助手 (80255405)
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Keywords | ストレス蛋白質 / 細菌病原性 / 細胞内寄生細菌 / マクロファージ / Listeria monocytogenes |
Research Abstract |
細菌は,生体への感染に際して様々なストレスに曝される。従って,感染宿主内での細菌の生育および病原性発現にはストレス蛋白質が重要な役割を果たす可能性を考えることができる。感染初期の生体防御機構の中心であるマクロファージ(MΦ)等の食細胞による殺菌作用は,細菌が感染時に遭遇する最も過酷なストレスであり、細胞内寄生細菌とってMΦでの殺菌機構からのエスケープと増殖能は、重要な病原因子と考えられている。このような観点から,これまで我々は,細胞内寄生細菌Yersinia enterocoliticaを用いて, MΦ内増殖には、貧食によって誘発されたストレス蛋白質の一つGsrAが必須であることを明らかにしてきた。本年度は、異なるエスケープ機構を持つListeria monocytogenesを用いて、MΦ内増殖と病原性発現における主要なストレス蛋白質DnaKの役割を検討し、以下のような成果を得た。(1)まず、DnaKの遺伝子をクローニングし解析した。dnaK遺伝子は1,842bpから構成され,613個のアミノ酸をコードしていた。さらに近傍の領域(8,000bp)のクローニングを行い、dnaKはhrcA,grpE,dnaK,dnaJ,orf35,orf29の6つの遺伝子からなるオペロンの中に存在することを明らかにした。さらに、このオペロンは少なくとも3つの転写ユニットから構成されることを明らかにした。(2)DnaKの役割を解明する目的で,dnaK挿入変異株を分離し、MΦ内増殖能を検討した。その結果,貧食直後のMΦ内のdnaK変異株の生菌数は野性株の約1/10であったが,以後4時間まで野性株と同様に増殖可能であることが明らかとなった。貧食された菌数を顕微鏡下で測定したところ,変異株は貧食効率が顕著に低下していることが明らかとなった。一方,MΦ細胞質内では,野性株と同様に増殖可能であることを電子顕微鏡下で確認した。さらに、変異株のMΦに対する付着率が野生株に比らべ顕著に低下していることを明らかにした。以上の結果より,L.monocytogenesのシャペロン機能を持つストレス蛋白質DnaKは,本菌のMΦ内増殖には必須ではないが,貧食過程に関与することが明らかとなった。これらの研究を通じて、細菌の病原性発現に関わる菌種特異的な機構を超えた普遍的な機構の存在を明らかにすることができた。
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Research Products
(1 results)