1996 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀初頭物理学における二つの研究伝統に関する研究
Project/Area Number |
08680080
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
安孫子 誠也 聖隷クリストファー看護大学, 看護学部, 教授 (90202655)
|
Keywords | 化学熱学的伝統 / 粒子力学的伝統 / R.クラウジウス / エントロピー概念 / J.J.トムソン / 電子の発見 / 電磁気学の理論変化 |
Research Abstract |
研究の初年度に当る平成8年度には、二つの研究伝統、すなわち化学熱学的伝統と粒子力学的伝統の開始時点に焦点を当てて探ってみた。 1.化学熱学的伝統の開始時点は、R.クラウジウスによる熱力学研究とみなすことができる。特に1865年における彼によるエントロビ-概念の導入は、この伝統にとって特別な意味をもつ重要な出発点である。従来、しばしばエントロビ-概念導入の時期を1854年における「エネルギー転化の等価値」の導入にまで遡って考える見方がなされていたが、状態量としてのエントロビ-概念の導入過程を具体的に調べ、それは1865年とみなすべきであることを明かにした。 2.粒子力学的伝統の開始は、J.J.トムソンによる電子の発見に伴うとみなすことができる。しかし、1897年における電子のe/mの測定は、「電子の発見」というよりも「電子の存在の確認」とみなされるべきである。実際には、1893年頃における電磁気学の巨視的から微視的への理論変化を重視すべきであり、それは、大陸ではH.A.ローレンツ、英国ではJ.ラ-マ-等によって為された。本年度はJ.J.トムソンの研究経過を具体的に調べることにより、1893年から1894年の間に、彼の電流概念が変位電流から携帯電流へと変化していることを見い出した。こうして得られた運動する荷電粒子の描像は、その後の彼によるX線の発生源の研究を通じて1896年頃に原子を構成する荷電粒子の描像へと転化し、電子の存在の確認へと至ったとみなされる。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] 安孫子誠也: "クラウジウスによるエントロピー概念の導入" 科学央研究. (予定).
-
[Publications] Seiya ABIKO: "J.J.Thomson's Theory-Change and the Discorery of Electron" XXth International Congresis of History of Science, Book of Abstractos. (予定).