2008 Fiscal Year Annual Research Report
超高分解能光散乱スペクトロスコピーによる複雑系の内部ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
08J00465
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
南 康夫 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Brillouin散乱 / 光ヘテロダイン分光 / 実時間ゆらぎ計測 / 音響フォノン / 光ビート分光 |
Research Abstract |
物体内の音波の伝わる速さを調べることで物質の弾性率を求めることができ、音波の減衰する様子を調べることで、音波が媒質中のさまざまな自由度と結合しそのエネルギーが流れていく過程を知ることができる。弾性率や粘性率は物質の力学的性質を特徴付けるもので、その測定は物理工学上非常に重要である。 最も一般的な音波の測定法には超音波パルス法や超音波共鳴法といった圧電素子を用いて超音波を送受信することによって測定するものや、Bragg反射法や光偏向法といった超音波の送信には圧電素子を用い、受信つまり検出には光を用いて測定する方法などがある。しかし、上述の測定法はどれも圧電素子を接触させるため音場を乱す場合や、そもそも測定対象に圧電素子を取り付けられない場合には問題となる。 物質中では、熱揺動によって起こる密度の揺らぎが超音波なって常に伝搬している。この超音波の伝わる速さや減衰する様子を光散乱(Brillouin散乱)により調べることができる。超音波の送信にデバイスを用いる必要がなく、また、超音波の受信、つまり、検出には光を用いるため完全に非接触である。本研究ではこのBrillouin散乱を利用した測定方法を採用した。Brillouin散乱を利用した方法にも熱フォノンと光の相互作用時間が十分に長くない場合には、測定精度に不確定性が生じるといった問題があった。また、Brillouin散乱は散乱能が非常に小さく、Brillouin散乱を利用した方法は測定に長時間を要するといった問題点があった。 そこで、本研究では以上の問題点を解決すべく、周波数分解能の向上、光ビート分光法の迅速化を図った上で、超高分解能迅速Brillouinスペクトロスコピーを開発した。このスペクトロスコピーを利用することでソフトマターの遅い現象変化をリアルタイムで観察可能となる。
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Research Products
(8 results)