2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J01225
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
二ノ宮 崇司 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | マフラ・セム祖語 / ジッバーリ語 / フィールド調査 / 音響解析 / 分節音 / プロソディー |
Research Abstract |
本研究は、マフラ・セム祖語の音声・音韻のよりよい再建を行うことを目的としている。今年度は、祖語再建のための基盤作りに努めた。具体的には、オマーン・ズファール地方でフィールド調査を行い、ジッバーリ語(オマーンの危機言語の1つ)の音声資料を収集し、その音響解析を行い、先行研究が残した諸問題を検討した。マフラ・セム祖語を再建する上で、これら一連の作業は、欠かすことができない。ジッバーリ語の調査・解析の結果、様々なことが明らかになり、新たな問題点も見えてきた。解決できた点は2つある。1点目は、分節音に関するものであり、特に、音声的実体が不明な/s/の解明である。/s/はJohnstone,T.M.(1981)Jibbali lexicon.Oxford:Oxford University Press.(以下、Johnstone 1981)以来、記述された音である。調査の結果、/s/は、語頭で[s^w]、語末で[c]と実現する音であると結論づけられた。2点目はプロソディーに関るものであり、特に、1音節語の解析・調査を行い、先行研究のプロソディー表記を検討した。その結果、Johnsotne(1981)のストレス記号の有無は、音圧だけでなく、ピッチや音質も関与したものであると結論づけられた。これらジッバーリ語の解析・調査は、ジッバーリ語の歴史的変化の考察、マフラ・セム祖語の再建を行う上で重要なものとなるが、/s/の語中環境の実体、「強調音」の実体、多音節語のプロソディーの実体など、解明すべき点も多い。また、フィールド調査の結果、ジッバーリ語の方言区画、ジッバーリ語の言語接触、ジッバーリ語と親族関係にあり、危機言語でもあるホブヨト語の記述など、本研究大きくと関わる新たな未開拓領域を見つけることができた。これらの研究領域は、マフラ・セム諸語の多層的な歴史研究の可能性を示すものである。
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Research Products
(6 results)