2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J01308
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北台 紀夫 Osaka University, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アミノ酸 / モンモリロナイト / 吸着 / 赤外分光法 / ATR-IR |
Research Abstract |
鉱物-アミノ酸相互作用は,生命の化学進化におけるアミノ酸の重合化に本質的な役割を果たしたと考えられている.これまで多くの研究が行われ,様々な鉱物がアミノ酸の重合化を促進することが証明されてきた.この促進機構の定量的解明は,原始地球におけるアミノ酸の重合に有利な鉱物種・環境・時間スケールなどを評価する上で必須である. アミノ酸はCOOH基,NH_3^+基などの解離しうる官能基を持ち,水溶液中で様々な化学種で存在する,これら化学種の違いにより,重合反応性が大きく異なることが知られている.一方解離基を持つ有機物は,鉱物表面では水溶液中とは異なる化学種で存在することが,有機酸(フタル酸など)の吸着状態分析などによりしばしば報告されている.このため,アミノ酸も水溶液中とは異なる化学種で鉱物に吸着し,このことが鉱物のアミノ酸重合促進効果に寄与している可能性がある.吸着したアミノ酸の化学種が分かれば,その情報と各化学種の重合反応性についての情報とを組み合わせることで,この寄与を評価できると考えられる. 以上のような観点から,昨年度私はシリカへのリシンの吸着状態分析を行い,化学種の定量に成功した.本研究ではこの方法論をさらに発展させ,より複雑な鉱物であるモンモリロナイトへのリシンの吸着状態分析を試みた.分析の結果,リシンは負に帯電したモンモリロナイト表面との電気的作用によって吸着し,主に1価陽イオンとして存在することが明らかとなった.またpHに依存してリシンが吸着する部位が異なり,低pH条件ではリシンは主にモンモリロナイト層間へ吸着し,pHが増加するにつれて端面の水酸基(Si-OHなど)への吸着量が増えていくことが分かった.このように,粘土のような表面のキャラクタリゼーションが非常に困難な鉱物への吸着現象についてさえ,本研究で用いた方法論を使えば定量的かつ詳細な分析が可能であることが見出された.
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Research Products
(7 results)