2008 Fiscal Year Annual Research Report
波形インバージョンによる局所的なマントル遷移層構造の推定
Project/Area Number |
08J02141
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
冨士 延章 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 波形インバージョン / マントル遷移層 / モデル尤度 / 非弾性減衰 / 偏微分係数 / 特異値分解 |
Research Abstract |
本年度は、日本付近下の上部マントルおよびマントル遷移層をサンプルした20-200秒帯域の実体波波形を用いて、6地域の1次元S波速度構造および非弾性減衰Qs構造の同時推定を行った。解像度テストによるインバージョンスキームの感度について検討を行い、S波速度構造の情報をより抽出することができることを示した。本研究では特異値分解(SVD)を用いたインバージョンを行うが、SVDの性質の考察も入念に行い、Wiggins(1972)の記述を簡単に定式化しなおし、データ空間とモデル空間の関係を明白に記述した。それによって、個々の波形に対するSVD展開係数のヒストグラムから、本研究で得られる情報は個々の波形からでは目視で抽出することがとても困難な情報であることを示した。また、AIC(Akaike Information Criteria)による推定モデルの評価における、波形の持つ独立パラメータの決定方法について検討を加えた。実際のデータからは、波形が持つ情報は、すべてが独立ではないために、独立パラメータ数が縮退している可能性が示唆された。 インバージョンでは、データの選定基準に関わらず、全地域においてPREMよりも全体的に高速のS波速度構造が得られたが、これは長周期の表面波トモグラフィーの先行研究と一致する。さらに、非弾性減衰については、PREMのQs=143よりも相当小さいQs〜50という値が推定された。実際には、3次元の弾性構造や震源関数等の問題があるため、Qsは最小の値と考えることができるが、この結果はマントル遷移層内の水、温度の状態について制約を与えることができる。もし、Qsが50であれば地震波速度と温度の関係(偏微分係数)が2倍も変わる可能性があり、水がスラブによって遷移層まで運ばれたために、Qsが小さいと考えることもできるという点で地球物理的に興味深い結果である
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Research Products
(13 results)