Research Abstract |
これまでに,様々なRNA検出法が開発されている。その中でも標的核酸を鋳型とした有機化学反応によるRNA検出技術が注目されている。本法では,酵素や温度変化を必要としないため,生細胞に対してマイルドな条件で細胞内RNAの検出が可能になると考えられる。これまでに,標的上での消光基の脱離反応を利用したRNA検出法が報告されているが,水溶液中での加水分解によるバックグラウンド蛍光が非常に大きいのが問題であった。そこで本研究では,さらにシグナル/バックグラウンド(S/B)比を高めることを目的とし,標的核酸上での還元反応を引き金とした蛍光発生システムを開発した。 還元を引き金として蛍光を発するフルオレセイン誘導体を結合したDNAプローブと,還元剤を結合したDNAプローブを合成し,これらが標的上で酸化還元反応を起こすことにより,標的遺伝子を認識できるシステムを構築した。フルオレセインの片側の水酸基をメチルアジド基に変換した誘導体を合成した。この分子は,還元剤である水溶性ホスフィンと反応することにより,メチルアジド基が脱保護され,共鳴構造の変化により吸収スペクトルが変化し,約300倍の蛍光を発した。次に,この蛍光分子をDNAプローブに連結し,還元剤としてのトリフェニルホスフィンを連結したDNAプローブと標的DNA上で反応させた。その結果,標的DNA上での2つのプローブの化学反応に由来する蛍光シグナルが観察され,約5分程度で反応は完全に進行した。一方,標的DNAが存在しない場合においてはほとんど蛍光を発さないことから,本蛍光発生システムは非常に優れたS/B比を持つことがわかった。さらに,化学反応が回転することにより,標的DNAに対して約50倍にシグナルを増幅することがわかった。来年度は,本システムを実際に生細胞内におけるRNA検出に応用する予定である。
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