2008 Fiscal Year Annual Research Report
ABCA1によるapoA-I依存コレステロール排出およびその調節機構の解明
Project/Area Number |
08J04207
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長尾 耕治郎 Kyoto University, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ABCA1 / apoA-I / cholesterol / taurocholate / Tngier disease / HDL |
Research Abstract |
ABCA1は抹消組織で余剰となった脂質をapoA-Iへ受け渡すことで、善玉コレステロールとして知られる高密度リポタンパク質(HDL)の新生を行う。このため、ABCA1の機能欠損は血中HDLが減少するTangier病を引き起こす。このように、ABCA1は体内の脂質の恒常性の維持において重要な役割を果たすが、ABCA1によるHDL形成機構の詳細は不明である。本研究ではABCA1の機能をapoA-Iとの結合とapoA-Iに依存しない脂質の輸送の2つに分けて検証した。apoA-IとABCA1の結合は蛍光標識したapoA-IのABCA1発現細胞への結合量で評価した。また、apoA-Iに依存しない脂質の輸送はタウロコール酸等のapoA-I以外の脂質受容体への脂質の排出量で評価した。これらの評価を野性型及びTangier病患者で見つかった変異型ABCA1(W590S変異型)を発現する細胞株を用いて行った。本研究により、野生型ABCA1はapoA-Iのような生理的な脂質受容体だけでなく、タウロコール酸のような非タンパク質の脂質受容体にも脂質を排出することが明らかになった。一方で、W590S変異型のABCA1にはタウロコール酸への脂質排出活性は検出されなかった。また、野生型とW590S変異型のABCA1にapoA-Iは同程度結合したが、その解離はW590S変異型では野生型に比べ有意に遅くなった。これらの結果は、apoA-IとABCA1の結合とapoA-Iに依存しない脂質の輸送は互いに独立して起こり、apoA-Iへ脂質が受け渡されることによりABCA1からのapoA-Iの解離が促進されることを示唆している。本研究より、ABCA1によるHDL形成過程が少なくとも4つの段階に分けられるという新規のHDL新生モデルを提唱した。(Step1)ABCA1へのapoA-Iの結合。(Step2)apoA-Iに依存しない脂質の輸送。(Step3)ABCA1に結合したapoA-Iへの脂質の受け渡し。(Step4)脂質を受け取ったapoA-IのABCA1からの解離。
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Research Products
(4 results)