2009 Fiscal Year Annual Research Report
低エネルギー超高分解能光電子分光によるコバルト酸化物超伝導体の電子構造の研究
Project/Area Number |
08J04412
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
荒金 俊行 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 光電子分光 / コバルト酸化物 |
Research Abstract |
水和Co酸化物超伝導体における全ブリルアンゾーン中での電子状態を単一試料壁開表面上で測定する事を目的として、低温多軸回転装置の設計・製作及び評価を行い、高精度な実験に対して十分な精度が出ている事を確認した。極低温冷却装置とのマッチングの設計を行い、現在製作を行っている。これと平行して、分子科学研究所放射光施設UVSOR及び高エネルギー加速器研究機構PhotonFactory、米国ウィスコンシン放射光施設SRCにおける光電子分光装置を用いて非水和Na_xCoO_2の角度分解光電子分光(ARPES)測定を行い、幾つかの知見を得た。 (i)高ドープ領域におけるスピン密度波(SDW)転移と電子構造の関係を探る目的で、ARPES測定を行い、3次元的にフェルミ準位(E_F)近傍の準粒子構造及びフェルミ面を決定する事に成功した。フェルミ面は低ドープ試料においては擬2次元的なトポロジーを有する一方で、SDWを示す高ドープ試料においては、顕著な3次元性が現れ、トポロジーが転移する事を見出した。この結果から、SDW転移の起源には3次元成分を強く持ったネスティングによるフェルミ面の電子-ホール不安定性が密接に関係していると結論した。 (ii)高ドープ領域における電子状態の詳細なドープ量依存性を調べる目的で、ドープ量を系統的に変化させた試料(x:0.35-0.85)においてARPES測定を行った。その結果、a_<1g>バンドはドープ量の関数に対応したケミカルポテンシャルシフトによりリジットバンドシフトを示し、高ドープ領域におけるc軸長の縮みに対応した顕著な面間相関が出現する事を見出した。特に、非常に高いドーピング領域においては、k_zに依存してa_<1g>バンド全体がE_Fより下に沈み込む振る舞いを示し、フェルミ面のトポロジーがさらに変化する事が示唆される。
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Research Products
(9 results)