2008 Fiscal Year Annual Research Report
低エネルギー電子衝突による変角振動制御された分子の共鳴生成機構の精密測定
Project/Area Number |
08J05032
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
加藤 英俊 Sophia University, 理工学研究科物理学専攻, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 電子衝突実験 / 励起分子 / 形状共鳴 / 振動励起 / 断面積 |
Research Abstract |
熱的に振動励起された分子を標的とし、低エネルギー電子衝突による分子振動と形状共鳴の生成崩壊ダイナミクスへの温度依存性の解明が本研究の目的である。分子を加熱するとボルツマン分布によればCO_2分子の場合、室温では全体の92%が基底状態にあるのに対して、520Kでは30%が振動励起状態にあり、その内93%が変角振動であることが見積もられる。このような直線分子の変角振動励起状態では、縮退している電子状態が核の変位(角)により縮退が解け、振電相互作用によって分子の最安定構造が対称性の低下した構造へ遷移する。これらの対称性の破れが振動励起に現れる形状共鳴の発現に大きく反映することが期待できる。本研究課題では、抵抗加熱法を用いた分子の加熱用ガスノズルを製作し、既存の電子分光装置に増設することで室温300Kから750Kの加熱温度領域で電子エネルギー損失スペクトル及び励起関数の測定を行った。その結果、基底状態(v=0)から変角振動(v=1)励起の形状共鳴エネルギー(3.8eV)と比べ、変角振動(v=1)状態から変角振動(v=2)励起は低エネルギー側に約0.4eVシフトし、脱励起(v=1→0)は低エネルギー側に約0.2eVシフトすることを観測することに成功した。また、脱励起(v=2→1)の形状共鳴エネルギーは脱励起(v=1→0)よりもさらに低エネルギー側へのシフトを観測することに成功している。以上、低エネルギー電子衝突による分子振動と形状共鳴の生成崩壊ダイナミクスへの温度依存性をCO_2分子についてその詳細を実験的にはじめて解明できた。得られた新しい知見は基礎研究への今後の展開のみならず、本研究では各励起断面積の絶対値を得ているため、励起分子のベンチマークとしての意義は極めて高い。
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Research Products
(2 results)