Research Abstract |
時間・空間分解能に長けた脳磁図(MEG)を用い,聴覚における時間知覚の脳内処理『特徴』および『領域』を検証した。具体的には,「時間的同化」現象を対象として,(1)聴覚における時間知覚を検証する心理物理学的検討をおこない,(2)MEGを用いて脳活動を計測し,心理物理学的現象に対応する時間知覚の脳内処理を調べた。さらに,(3)(2)で得られたデータにダイポール推定および最小ノルム推定を施し,時間的同化に関わる脳領域の推定を行った。実験には1000Hz,20ms[立上り/立下り5ms,継続部10ms]のトーンバースト3つを区切り音として用いた。刺激パタンは23種類(標準刺激3種,ダミー刺激20種),呈示レベルは77dBSPLであった。被験者は2つの隣接する時間間隔が等しいか,異なるかを判断する条件(判断有り条件)に加え,時間判断を行なわずボタンを押す条件(判断無し条件)を実施した。推定の結果,時間的同化の生起時には刺激呈示後約200ミリ秒以内の時間範囲において右下前頭皮質の活動が抑制されることが示された。さらに,昨年度以前に取得した事象関連電位(ERP)データを,数理統計解析手法(単純ベイズ分類器を槽成)を用いて再分析した。個人別加算平均波形の主成分得点をもとに被験者が知覚判断課題を行っているかどうかを79%以上の精度で,また,被験者の知覚判断内容を70%以上の精度で識別することができた。この分析から,時間知覚判断および錯覚にSNCtと呼ばれる徐成分が重要であることが確認された。またChernoff情報量を用いた分析から、刺激全体を聴取し知覚判断を行う前の脳活動も時間同化に関係している可能性が示唆された。来年度以降には脳磁場の周波数解析(位相同期,コヒーレンス解析)や多変量解析(主成分分析)を行うことで,時間知覚に関わる脳領域間のつながりや,時間知覚の内容を決定する脳活動のタイミングを推定し,それにより時間的同化に関わる脳活動の特徴を詳細に解明する。
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