2009 Fiscal Year Annual Research Report
大衆メディアとしての十九世紀挿絵本 ジュール・ヴェルヌと二十世紀の大衆文化
Project/Area Number |
08J05920
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
石橋 正孝 Gakushuin University, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 19世紀フランス文学 / ジュール・ヴェルヌ / 挿絵 / 連作 / 源泉 / 草稿研究 / 出版 |
Research Abstract |
19世紀フランスの小説家ジュール・ヴェルヌの連作《驚異の旅》において、個々の独立した作品を連続させる連作の詩学が成立する際に、作品を場面に分割し、それを連続させる挿絵が果たした役割はいかなるものか。この問いに答えるべく、ヴェルヌの創作活動を、(1)連作化以前、(2)制度としての連作の成立(挿絵版の義務化)、(3)「地球の描写」としての連作の成立(編集手順の確立)、(4)編集者エッツェルの死後、(5)ヴェルヌ没後の5期に分け、各時期を代表する作品を分析する準備作業を初年度に引き続き行った。(1)について『地球から月へ』を全訳し、草稿の調査を行ったほか、(2)の時期に属する『月を回って』『海底二万里』について、前者の草稿調査と全訳、後者におけるヴェルヌの科学的資料利用の分析を論文「ジュール・ヴェルヌの小説『海底二万里』における科学的資料の位置」(「明學佛文論叢」第43号)にまとめた。また、(3)について、過去に行った『ミシェル・ストロゴフ』草稿研究を本研究のパースペクティヴから整理し、補完する作業を進めたほか、ヴェルヌが他人の原稿を書き直した『ベガンの五億フラン』の成立過程の分析を行い、挿絵版連作という出版形態における作家の在り方を浮き彫りにした。さらに、一般向けに、新島進編『ジュール・ヴェルヌの描いた横浜-「八十日間世界一周」の世界』(慶應義塾大学出版会)の第一章と第二章を担当し、『八十日間世界一周』(1872年)の成立事情を平易に解説した。報告者が会長を務める日本ジュール・ヴェルヌ研究会の主催で、作家奥泉光を招いてその作品『新・地底旅行』をめぐるシンポジウムを行った。この時の発言を元に、「空洞地球と永遠回帰-奥泉光小論」を「早稲田文学」第三号に発表し、シリーズものの歴史の中にヴェルヌを再定位する作業に着手することができた。
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Research Products
(4 results)