2009 Fiscal Year Annual Research Report
針葉樹における近交弱勢が集団の遺伝的多様性維持に与える影響の評価
Project/Area Number |
08J05986
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
富田 基史 Tohoku University, 大学院・農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 近交弱勢 / 保全遺伝 / 孤立個体群 / 遺伝的多様性 / 統計モデル / 階層ベイズモデル / 劣勢有害遺伝子 / 人工授粉 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き本年度は,アカエゾマツ孤立個体群における近交弱勢の強さを推定することを試みた.まず,孤立個体群の結実期における近交弱勢の強さを推定することを試みた.通常は受粉実験によって制御される花粉親の組成を,親子解析にもとづく花粉散布パターンから推定し,種子の生残率などの情報と統合することで,結実期の近交弱勢の強さを推定する手法を開発した. 昨年度に行った解析では,早池峰山のアカエゾマツ孤立集団は,自殖種子の割合がきわめて高いものの,自殖に対する近交弱勢は強いということが示唆されたが,本年度に異なる仮定・データセットに基づいた解析を試した結果,一部の解析において昨年度とは異なり,孤立集団では結実期の近交弱勢が弱くなるという結果が得られた.これは現在の解析が不十分であるということを意味している.来年度も引き続き,この解析を行う予定である. さらに,同じ調査地において発芽以降の近交弱勢の強さを推定し,近交弱勢によって自殖・近親交配由来の個体を淘汰することで次世代の遺伝的多様性にどのような影響があるかを検討した.その結果,発芽以降の近交弱勢が集団の遺伝的多様性に与える影響は小さく,有効集団サイズが小さいことによる機会的損失(ボトルネック)の影響がはるかに大きいことが示唆された.この傾向は多種における研究結果とも概ね一致しており,近交弱勢は少なくとも種内の遺伝変異には大きな影響を与えないということが示唆された.来年度はシミュレーションの改良を行い,より保全遺伝学的な観点から解析を行いたいと考えている. また,本年度は早池峰山においてアカエゾマツがわずかに開花したので,未成熟の種子および成熟種子を採取した.来年度はこれらの遺伝解析を行い,近交弱勢による淘汰が種子成熟のどの段階で起こるのか詳細に検討する予定である
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Research Products
(3 results)