2008 Fiscal Year Annual Research Report
量子モンテカルロ法による高精度電子状態計算の実現とフント第一、第二則の統一的解釈
Project/Area Number |
08J06432
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小山田 隆行 Tohoku University, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フント則 / ビリアル定理 / 電子相関 / 計算量子化学 / 第一原理計算 / 定常状態 / 電子状態 |
Research Abstract |
フント第一則については電子間斥力の低下による解釈が一般的である(従来解釈)。しかしビリアル定理を満たす高精度計算からフント則の成立要因は電子間斥力エネルギーの増加を伴う、原子核電子間引力エネルギーの低下によることが報告されている(新解釈)。従来解釈はビリアル定理に違反し、その誤りが指摘されてきた。この問題においてHe,Be原子等の励起配置では定理に基づき相関を高精度評価した研究が行われているが、これらに第二則は適用されない。第一、第二則の適用される中性原子基底配置に関してはHF近似の範囲でしか研究されていなかった。本研究はDMC法により2p,3p原子の基底状態に対し第一則解釈の検証を行い、DMC法により相関を高精度評価した場合にも新解釈が有効であることを確認した。しかし現在、DMC法の結果は2状態間のエネルギー差を実験と比べ過大評価している。DMC法による高精度電子状態計算を実現するには系の電子構造への交換・相関の影響について正確な知識を蓄積した上で現状の問題点を明瞭にすることが重要である。本研究はエネルギー差の過大評価は一重項の試行節が適切でないためと考え、これを明らかにするため一重項について、従来試行節の構成に用いていたGAUSSIAN98によるHFR計算と、HF解である数値解法によるHF計算の両者で電子密度分布を求め比較を行った。その結果、GAUSSIAN98によるHFR計算ではHF解と比較して深刻な誤差が確認され全軌道角運動量の異なる2つの一重項の混じった状態であることを確かめた。続いて本研究は、MCHF法により相関を高精度評価し第一、第二則の検証を行い、第一、第二則ともに新解釈により統一的に説明されることを実証した。MCHF法により相関を高精度評価した結果、HF法によるエネルギー差の過大評価は大幅に改善され、実験との良い一致が得られた。
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Research Products
(5 results)