2008 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫類のグラウンドプランの解明-最原始系統群イシノミ目への分子発生学の導入-
Project/Area Number |
08J06763
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中垣 裕貴 University of Tsukuba, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イシノミ目 / 昆虫類 / 比較発生学 / 分子発生学 / グラウンドプラン / 形態形成 / 体節形成 / engrailed |
Research Abstract |
昆虫類については古くから数多くの比較形態学的研究が行われてきたが、昆虫類の基本的体制、グラウンドプランの理解は未だ不十分であり、頭部体節制など、重要な課題が残されている。分子発生学は、発生現象の遺伝子メカニズムをよく説明してきたが、その複合的最終産物である体制の理解を進展させてはいない。本研究課題では、祖先的形態をよく残していると想定される昆虫類の最原始的分類群、イシノミ目を材料とし、形態形成の過程を厳密な比較発生学的方法で検討すると同時に、分子発生学的手法を導入し、形態形成遺伝子の発現パターンからも相同制に基づく比較議論を行うことにより、昆虫類のグラウンドプランの解明を目指すものである。 本年度は、体節形成をテーマとし、イシノミ目への分子発生学的手法の導入を行った。イシノミ目は前方から順に体節を形成していく短胚型の体節形成を行うので、体節形成期初期の検討によって頭部体節制についての議論が可能になるだろう。各体節の後半部で発現することが節足動物各群で知られているengrailed(en)ホモログ(相同遺伝子)をイシノミ目でクローニングし、in situハイブリダイゼーション(ISH)によって遺伝子の発現領域を可視化した。クローニングの過程で、イシノミには2つのenホモログがあることが判明し、その片方でISHに成功した。enホモログに特徴的な体節反復的な発現パターンを確認し、複数ステージの胚の観察から、このホモログの発現が、形態的な体節形成に先立って始まることが示唆された。このことは体節形成過程のより詳細な検討にenホモログの発現パターンが有用であることを示している。 もう1つのホモログについては、適切なISHの条件が見つからず発現パターンを観察することができていない。現在、引き続きISHの条件検討を進めている。
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Research Products
(2 results)