Research Abstract |
本年度は,(1)気質やパーソナリティに関する研究について理解を深めることを目的として,パーソナリティ心理学の中でもとりわけ特性論的研究に関する最近の展開についてレビュー論文を執筆し,心理学の領域のみならず,経済学や疫学など他分野への波及・貢献の可能性を探るべく,幅広く展望を行った,(2)「子どもの気質と問題行動が親の養育態度によってどのように調整されるのか?」という点について明らかにするために,統計的遺伝・環境交互作用モデルを用いた検討を行い,子どものパーソナリティ・情緒的な問題などの特性が遺伝・環境交互作用する様子(もしくは,しない様子)について明らかにした,(3)3歳から26歳までの幅広い年齢層の双生児横断データを用いた行動遺伝解析を行い,パーソナリティや問題行動に関連する遺伝要因と環境要因の影響の仕方について,その相違について年齢層ごとに擬似発達的に考察を行った。 昨年度公表した4歳から6歳までの子どもの社会的スキルの発達に関する論文が,日本教育心理学会優秀論文賞を受賞した。上記の発達行動遺伝学研究において,単胎児のデータと比較することもひとつの重要な視点であり,この成果はすぐさま双生児研究へと適用可能である。また,海外渡航先において研究活動を直ちに開始し,共同研究として3件の国際学会発表を行った。このうち,パーソナリティのBig5次元のひとつである勤勉性の次元構造と健康関連行動について検討を行った学会発表は,Society for Personality and Social PsychologyよりDiverse Fund Awardを受賞した(第二発表者として)。さらに,プロジェクトで得られる縦断データの分析のために,高度な統計分析の修練にも力を入れた学会発表を行い,この統計的手法を用いた論文は,発達・教育心理学系の英文誌へすでに投稿された。
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