2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J07487
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
山田 朋美 Tsuda College, 学芸学部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 国際情報交換 / アイルランド / 対外認識 / 戦間期 |
Research Abstract |
研究員は、「戦間期日本におけるアイルランド認識」を研究テーマとし、日本における対外認識の形成過程を国際関係において問い直すことに取り組んできた。平成20年度は、日本とアイルランドの相互認識を比較することにより、日本の対アイルランド認識の特徴を明らかにすることを目的とし、アイルランドのナショナルアーカイブにおいて、アイルランドの日本認識に関する資料収集を行った。 その結果、以下の内容が明らかになった。両国の関係は主に、1931年の満州事変、1942年の在ダブリン日本領事館開設の2つの時期に集中する。満州事変以前、アイルランド指導層の日本認識は、地理的疎遠さも手伝って、「列強」の一国程度のものであった。しかし、満州事変勃発により、紛争当事者の日本と、当時国際連盟で非常任理事国を務めていたアイルランドは対立することとなった。あくまで「大国」主導の国際関係観を持ち、アイルランドを「小国」と軽視していた日本に対し、アイルランドでは、連盟および、連盟における「小国」の役割促進を国益とするデ・ヴァレラ(Eamon de Valera)のイニシアティブの下、日本政府の理念を正面から否定する政策がとられた。第二次世界大戦開戦後は、アイルランドが「中立」を保ち、日本が領事館をダブリンに置いたことから、日本側はこれを友好的であったと見なしていた。しかし調査の結果、日本領事館員による「反政府組織」との接触という「好ましくない」活動が存在し、こうした一連の行動が時に「中立」国アイルランドを窮地に陥れるものであったことがわかった。このように、調査の結果、両国における認識のギャップが明らかになった。また、国際関係の理想と現実の狭間で揺れるアイルランドに対し、日本政府は常にアイルランドの現実を突きつけ、その理想主義実践を困難にさせる対象であったことが明らかになった。
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