2008 Fiscal Year Annual Research Report
ボナヴェントゥラにおける「存在」と「数の等しさ」がもたらす美について
Project/Area Number |
08J07691
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
横道 仁志 Osaka University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 美学 / 哲学 / 中世美学 / 中世哲学 / 神学 / ボナヴェントゥラ |
Research Abstract |
今年度本研究の主題は、「数numerus」、「等しさaequalitas」という概念を基軸にして、ボナヴェントゥラの美学と神学の関係を探ることにあった。またその際、背景にある思想上の影響としてアウグスティヌスと偽ディオニュシオスがどのように関わってくるのかという問題も検討対象とされた。 ボナヴェントゥラは、快の原理を数的比例と定義する。快一般は、主体の受容能力と対象の作用の釣り合いによって成立する。複数の持続は、共通のリズム(数)を媒介にして、統一的な関係を実現する。この関係性こそ美である。これはアウグスティヌスの『音楽論』を継承した議論である。だがボナヴェントゥラは、別の箇所で、これと違った仕方で美を定義している。美を肖像画とモデルのごとき表象関係として規定するのである。しかしこれは、模倣理論の枠内に収まらない。肖像画は、モデルとの間に類似関係を取り結ぶと同時に、画家の構想とも類似性を形成する。だから、ここで提示される美論は、むしろ「表現論」、「範型論」の射程にある(偽ディオニュシオスの影響が示唆される)。 この二種の定義は、しかし背反するものではない。ボナヴェントゥラは、範型(モデルであれ画家の精神であれ)と表象との類似性を規定する際に、再び「等しさ」の概念を持ち出してくる。数的比例、数の等しさは、多と一を媒介する概念であると同時に、質料と形相、物質と精神、様相と本質の往還を可能にする概念でもある。こうして美が、魂の実践に関係づけられるとき、数的比例の概念は、美学の範晴を超えて、宇宙論、神学へと拡張される。なぜなら、数の等しさの究極は三位一体であり、宇宙の全存在は三位一体の反映なのだ。 今年度の成果として、以上の通り、彼の美学的概念、神学的概念の相互関係を整理した。また、彼の美学が、今日のJean Borellaの論じるようなシンボル理論に接続される見通しを開けたと考える。
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Research Products
(2 results)