2009 Fiscal Year Annual Research Report
ボナヴェントゥラにおける「存在」と「数の等しさ」がもたらす美について
Project/Area Number |
08J07691
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
横道 仁志 Osaka University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 美学 / 哲学 / 中世哲学 / 神学 / ボナヴェントゥラ |
Research Abstract |
本年度は、研究課題である「数の等しさaequalitas numerosa」という概念と、ボナヴェントゥラの記号概念との関係を探る方向で、研究を進めた。その際、補助線として、現代のキリスト教哲学者ジャン・ボレラのシンボル理論を参照した。 シンボルと一般的な記号とを分つ違いとは、シニフィアンが外的な指示対象を指示するか、記号の認識可能性(可知的指示対象)それ自体を指示するかだと、ボレラは述べる。言い換えると、シンボルというのは、意味内容を持たない空虚な記号、純粋な指示作用のはたらきをするような記号ということになる。つまり、シンボルは行為的なものであり、それを用いる主体と切り離せない。 アウグスティヌスが『キリスト教の教えDe Doctrina Christiana』の中で論じている『贈与記号signa data』の概念は、このシンボルの議論と同一線上に存在する。贈与記号の主旨とはこうだ。記号とは、主体が自分の心の内容resを伝達するために贈与するものであり、本質的に近似的なもの、つまり「適合adequatio」の対象である。反対に、記号を受け取るものは、記号の内容である伝達者の意思へと自分を「適合」することを求められる。 ボナヴェントゥラは、聖書の問題だったアウグスティヌスの記号論を、存在論一般に拡張する。全被造物は、神の創造によって与えられた記号signumであり、解読を要求する。人間は、被造物を通して、その内容たる神の意志へと「適合」することを求められる。したがって、「適合ad-aequatio」が可能となるための原理として、その背景に「数の等しさaequalitas numerosa」が要請される。言い換えると、ボナヴェントゥラにとって、記号=存在者とはリズム的なものなのである。 そして、この存在者の本質であるリズムは、下降、滞留、上昇という新プラトン主義的な三一致の概念で捉えられる。ボナヴェントゥラの中で、アウグスティヌスの記号論と、新プラトン主義的流出論は、内的な必然性を持って結びついている。これを可能にするのが三位一体の観念である。
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Research Products
(1 results)