2008 Fiscal Year Annual Research Report
黄色ブドウ球菌由来Isd蛋白質によるヘム輸送機構の解明
Project/Area Number |
08J08832
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邊 正人 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 蛋白質 / ヘム / Isd / ITC / 分析超遠心 |
Research Abstract |
1,IsdH-NEAT3のヘム結合能の解析 大腸菌発現系によるIsdH蛋白質の3番目のNEATドメイン(以下IsdH-NEAT3)が発現、およびアフィニティー精製、サイズ排除クロマトグラフィーによる精製が可能であった。ヘム結合能をヘムに特徴的なSoret帯の吸収を指標として、蛋白質あたり結合するヘム分子の数を求めた。2分子以上のヘムが結合することが示され、そのうち1つ目と2つ目以上のヘムは異なる様式で結合することが示唆された。等温滴定型熱量計を用いて更に精査したところ、IsdH-NEAT3あたり4分子のヘムが結合していることが確認された。これまでに報告されたヘム蛋白質と比較して、一度に複数のヘムを補足できるという点で新規な特性を見出すことができた。 2,IsdH-NEAT3変異体のヘム結合能の解析 IsdH-NEAT3の結晶構造からTyr642がヘムの鉄原子に配位しており、ヘムの結合に重要な残基であると考えた。ヘム結合領域を構成している他の残基にも着目し、Tyr642Ala,Tyr646Ala,Met565Ala,Tyr593Ala,およびTyr642Ala/Tyr646Alaの変異体を作成し、等温滴定型熱量計を用いて野生型との比較を行った。いずれの変異体でもヘムの結合が確認されたが、親和性が減少しており、特にTyr642Ala/Tyr646Alaの二重変異体で顕著であった。ヘムの結合により起こるエンタルピー変化が変異体では親和性と相関して小さくなっていた。これらの結果からIsdH-NEAT3のヘム結合にはTyr642は必須ではなく、ヘムは疎水的な残基で構成される溝に入り込むことで低親和性ながら結合することが示された。これはヘム輸送蛋白質ヘム間の直接的な相互作用を立体構造情報と熱力学的パラメーターから精査した初めての例であるといえる。 3,IsdH-NEAT3とヘムからなる複合体の解析 1、2で、野生型および変異型IsdH-NEAT3は蛋白質1分子あたり複数のヘム分子を結合していることが示された。IsdH-NEAT3に結合するヘム分子数の増大に伴う、IsdH-NEAT3-ヘム複合体の分子量の変化をサイズ排除クロマトグラフィーで検討したところ、予想に反して多量体が形成していることが明らかとなった。この画分を回収し、分析超遠心解析を行ったところIsdH-NEAT3が4分子程度会合した会合体が、更に会合していることが示された。これはヘム分子自体の有する会合する性質と、更に蛋白質との相互作用を介して超分子を形成することに着目し、確認した点で新規な知見であると考えられる。
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Research Products
(4 results)