2009 Fiscal Year Annual Research Report
月の進化履歴復元のための年代決定手法の開発と月面詳細地質年代マップの作成
Project/Area Number |
08J09211
|
Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
諸田 智克 Japan Aerospace Exploration Agency, 宇宙科学研究本部, 日本学術振興会特別研究員(PD)
|
Keywords | 月 / クレータ / 地質年代 / クレータ年代学 / 溶岩流 / かぐや |
Research Abstract |
これまでに本研究の目的である月面詳細地質年代マップの作成に向けて、月周回衛星「かぐや」に搭載された月面撮像分光機器(LISM)で得られた画像データを用いて、月面年代決定手法の開発・改良を行い、更にそれを適用することで月面地質年代調査を進めてきた。また、その結果から月の進化履歴の復元を進めている。 以下に研究内容とその成果の詳細を示す。 <月面年代決定手法の開発・改良>月表面を覆っている表土は宇宙空間に曝されている時間とともに、太陽風や微小天体衝突の影響によって、その反射スペクトルが赤化、暗化することが知られている。このスペクトルの赤化、暗化を月面成熟度として数値化することで、表面の年代指標として用いる事が可能である。 昨年度、本研究では月面成熟度を用いた年代推定手法の妥当性を検証したが、本年度は更に解析を進めて、クレータの年代と成熟度のキャリブレーション作業にとりかかっている。現状は、クレータ年代の見積りを進めており、約20個のクレータを年代決定した。今後は、それらのクレータの成熟度指標を算出し、クレータ密度から得られる年代とのキャリブレーション、誤差評価を行う予定である。 <月面地質年代の調査>クレータ年代学を用いて、月面地質年代調査を進めた。本年度、解析を行った領域は月の裏側の北半球にある海と衝突盆地である。それらの領域では、「かぐや」以前は高解像度データが欠落していたため、詳細な研究が行われていなかった。今回の年代決定により、月の裏側の海はほぼすべて解析済みとなった。 年代決定の結果から得られた主な成果を以下に示す。 月の海の二分性に関して、(1)表側と裏側のマントル内でのマグマの生成量が違っていた、(2)表側の地殻が薄いためにマグマの噴出が起こりやすかった、という二つの解釈ぶ提案されているが、どちらの影響が支配的かは不明であった。そこで重力異常データに基づいて裏側で地殻が薄い領域とされるモスクワの海に着目し、「かぐや」データを用いた詳細解析により、海を構成する溶岩流の体積を正確に見積もることに成功した。また、その結果を表側の同サイズのベースン内の溶岩流の体積と比較することで、表裏の海の二分性は地殻厚だけでは説明ができず、表側と裏側でマグマの生成量が3~10倍程度、異なることを明らかにした。 月の海を作ったマグマの熱源として、内因起源(放射性元素の崩壊熱など)と外因起源(巨大天体衝突)が考えられているが、いまだ解明されていない。月裏側の南半球には南極エイトケン盆地と呼ばれる太陽系最大の衝突クレータが存在する。そこで我々は、南極エイトケン盆地の内部と外部での火成活動の違いを調べることで、巨大衝突の火成活動に与える影響を調査した。月裏側の北半球にある海と南極エイトケン盆地内の海の年代決定を行い、その年代分布を比較した結果、南極エイトケン盆地の内部と外部で、溶岩の年代分布に大きな違いがない事がわかった。この結果から、南極エイトケン盆地をつくった巨大衝突は月内部のマグマ生成に大きな影響を与えなかったこと、月裏側のマグマは内因起源で生成されたことが示唆された。
|
Research Products
(8 results)