2008 Fiscal Year Annual Research Report
小型魚類を用いた配偶者選別に関わる脳領域の同定、及びその進化・発生学的起源の解析
Project/Area Number |
08J09680
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
奥山 輝大 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 初期応答遺伝子 / 配偶者選別行動 |
Research Abstract |
視覚情報依存的な配偶行動の制御に関わる神経基盤の解明を試みた。まず、交尾前にメスとオスを透明壁で隔離して互いに視覚的に認識できるようにすると、隔離解除後にメスの交尾受け入れが亢進することを報告した。また、このメスの交尾の受け入れ亢進が、フェロモンなどの嗅覚情報が関与しているものではないことを示した。 次に、メダカ脳において交尾行動依存に興奮する神経回路を同定することを目的として、行動前後における初期応答遺伝子c-fosの発現解析を行った。in situハイブリダイゼーション法を行った結果、交尾依存的に終脳全域、嗅球、視蓋細胞層、視床下部、下垂体前葉において強い発色が観察された。また、メスの脳を解剖により各脳領域に分けて定量的RT-PCR法によりc-fosの発現量を測定した。その結果、交尾後の個体では交尾前に比べて終脳、視蓋、小脳でそれぞれ平均1.8倍、2.1倍、2.2倍の有意な発現上昇が検出された。一方、視床下部・下垂体では有意差は検出されなかったが、交尾後の個体で平均1.77倍高い発現が検出された。以上の結果から、初期応答遺伝子c-fosの発現は交尾後、脳の複数の限定した領域で上昇しており、配偶行動における視覚情報処理(視蓋)、感覚統合(終脳:哺乳類の大脳に対応)、運動制御(小脳)などに関わる様々な脳領域の興奮を反映したものと考えられた。 そこで次に、交尾の受け入れ亢進に関与する候補脳領域を同定することを目的とし、隔離解除後(交尾後)30分における、透明壁隔離群(交尾相手を視認でき、受け入れ亢進を示す)と不透明壁隔離群(交尾相手を視認できず、受け入れ亢進を示さない)の間のc-fosの発現に差異がある領域を検索した。その結果、in situハイブリダイゼーションでは視蓋細胞層において、定量的RT-PCRでは小脳において、透明壁隔離群のメスのc-fosの発現量が高いことが示された。
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Research Products
(6 results)