2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J10920
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩澤 全規 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 大質量ブラックホール形成 / 大質量ブラックホール連星 / 恒星系力学 / 重力波 / N体シミュレーション |
Research Abstract |
超巨大ブラックホール(SMBH)を持つ銀河同士が衝突合体した場合、SMBHは力学的摩擦により銀河中心へ沈みSMBH連星を形成する。この連星が重力波放出により合体する事が可能ならば、銀河の合体によってSMBHは成長する事が出来、現在観測的に知られている銀河質量とSMBH質量の比例関係は説明される。 従来の研究では、等質量のSMBH連星で円軌道に近い軌道から始めた場合には円軌道に近いまま進化し、宇宙年齢以内に連星は合体出来ない事が分かっていた(ラストパーセック問題)。しかし、近年、質量比がある程度以上大きいとSMBH連星の離心率が大きくなり、非常に短い時間スケールで連星が合体することが分かってきた。しかし、どのようなメカニズムで離心率が大きくなるかは明らかでなかった。 本研究では、N体シミュレーションを用いて、SMBH連星と周りの星の相互作用を詳細に調べた結果、以下のような2段階のメカニズムが働き連星の離心率を上昇させる事が分かった。 まず、連星の質量比が大きい場合、銀河中心部のポテンシャルは重いSMBHが作るケプラーポテンシャルに軽いSMBHが作る摂動ポテンシャルが合わさった形になる。この時、連星の軌道が完全な円軌道でなければ、摂動ポテンシャルは3軸不等となる。この為、周りの星の軌道角運動は保存しなくなり、連星系に対して順行軌道・逆行軌道の間を遷移するものが現れる。これらの一部は特に軽いほうのSMBHと相互作用して系から脱出する。相互作用の散乱断面積が順行軌道のほうが大きいために平均すると脱出する星は連星系から角運動量を奪い、連星の離心率は上昇する事が分かった。 銀河の合体成長はマイナーマージャーによるものが支配的である事が知られており、多くのSMBH連星はある程度の質量比を持つと考えられる。そのような連星は非常に短いタイムスケールで合体出来るので銀河の合体により、SMBHは成長出来ることが示せた。このメカニズムは30年近く議論されてきたラストパーセック問題に対する一つの解答である
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Research Products
(1 results)