Research Abstract |
本研究課題では,「プローブ型ナノツールを用いた局所環境制御技術による単一細胞解析システム」の構築を最終目的としている.今年度は,先ず,ナノ・マイクロデュアルピペットを用いた局所環境制御システムを構築し,Na^+を含む溶液・含まない溶液の噴出を切り替えることにより,局所的なNa^+濃度をより任意かつダイナミックに制御することを実現した.しかしながら,更に研究を進めていく過程で,本手法では,短期的には濃度をある程度定量的に制御出来ても,長期的には,局所的なNa^+の供給と拡散の平衡によりある単一の濃度しか生成できないため,不十分であることが明らかとなった. そこで次に,同システムを,両ピペットに印加する電圧のON/OFF及び電圧値を独立に制御可能なように拡張した.本拡張により,Na^+を含む溶液とNa^+を含まない溶液を同時に噴出しながら,印加電圧により独立に噴出速度を制御し,その差分により決まるNa^+濃度を利用することで,ピペットに注入する溶液のNa^+濃度を変更することなく,局所的なNa^+濃度を定量的かつ長時間安定的に制御することを可能とした. これにより,任意に生成したNa^+濃度の変化に対するべん毛モータの回転速度の動的な応答を観察することなどが可能となり,べん毛モータの回転原理の解明などに貢献するものと期待される.また,実際に,解析だけではなく,べん毛モータのナノアクチュエータとしての応用という観点から実験を行い,即応性高く繰り返し・詳細かつ長時間安定的にNa^+駆動型べん毛の回転数を操作可能であることを示した.すなわち,我々の構築したナノ・マイクロデュアルピペットによる局所環境制御システムは,単一細胞解析のみならず,電気化学・化学的なエネルギーにより駆動する生物分子モータの駆動力の制御手法を確立するのに有用なツールであることを実証することが出来た.
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