1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09620007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
山岡 健 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00210328)
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Keywords | 宿親・宿子制 / 擬制的な親子・兄弟関係 / 非公式の社会統制 / 生ける法 / 若者宿 / 間人主義 / 日本型システム / 人間の社会行動を現実に決定する規範 |
Research Abstract |
1.舞阪町の若者の通過儀礼として、やど(宿)がある。やどの伝承は浜名湖周辺に多く伝わっている。 宿子はまず、中学校(高等小学校)を卒業して、すぐ同年輩(一〜二歳は年齢が上下することもある)の仲のよい者たちが、兄弟分と呼ぶ七〜八人のグループをつくることから始まる。やどは七〜八人ずつで複数のやどが存在する。やど生活は宿親と宿子と宿子同士の関係を軸として展開する。この宿親・宿子、宿子同士は実の親子あるいはキョウダイではないから、その関係は擬制的な親子関係と擬制的な男子のキョウダイ(兄弟)関係である。やどとはそうした擬制的な親子・キョウダイ関係を原理として編成される社会関係である。 その親子関係を親と子という二世代にかかわる、いわばタテの関係とするならば、宿仲間あるいは宿子同士の即ち、同じ世代の、いわばヨコの関係にある者同士を「兄弟分」という。 2.「生ける法」は、単なる観念上の存在ではなく、『人間の社会行動を現実に決定する規範』であり、また、「生ける法」の法的性格は、支配・服従関係を体現する限りでの非公式の社会統制である。 擬制的な親子・兄弟関係は、若者の地域生活にかかわる「躾」などの「非公式の社会統制」に服する。地域社会(むら)をバックとした社会化機能を果たすものであり、マチの秩序としての価値・規範体系を構成する要素にイエ観念、ムラ観念をみることができる。 3.「若者組」は、伝統的文化に基礎づけられた独自のシステム特性が見出される。すなわち、若者集団の内部秩序は、「年輩序列」の原理により、厳しく統制されている。 4.「日本型システム」の特性、(1)日本型システムの人間的基盤は、「関係体」としての「間人」という新たな人間モデルに求められる。(2)「間人主義」の価値観は、「相互依存主義」、「相互信頼主義」、「対人関係の本質視」である。(3)日本社会の伝統的な基層をなす社会システムは、「間人」と呼ぶことが適切である「関係体」を成員とし、彼らに全面的な帰属と生活の場を提供する、高度に自律的・自立的な組織である。 5.「間人主義」の価値観が、「若者組」のシステム特性と、どのように関わるのか? このことについて、今後、分析・検討しなければならない。
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Research Products
(1 results)