Research Abstract |
本年度はまず,永久磁石使用の超小型電子ビーム入射型多価イオン源(micro-EBIS)の改良型の動作試験を行った。また,通常の電子衝撃型イオン源を用いた^3He^<2+>イオン-N_2,O_2,CO,CO_2,CH_4,C_2H_2,C_2H_6,C_3H_8の各分子衝突系およびプロトタイプのmicro-EBISを用いた多価Ne^<2-6+>イオン-CH_4,C_2H_2,C_2H_4,C_2H_6の各分子衝突系における電荷移行反応断面積測定をそれぞれ行った。 1.改良型micro-EBISの動作試験:昨年度,改良型のEBISを設計制作し,イオン源の中心軸状の軸方向磁束密度分布が,設計以上に強力でかつ一様となり,今まで以上に高電離の多価イオンが取り出せるものと期待された。しかし今年度の動作試験の結果,電子銃からの電子ビームが逆に強力な磁石の中央部にほとんど入射できないことが分かった。そこでイオン閉じ込め用電極の電位の見直しや電子銃の位置の変更などの検討をさらに進める。 2.^3He^<2+>イオン-N_2,O_2,CO,CO_2,CH_4,C_2H_2,C_2H_6,C_3H_8分子衝突系における電荷移行反応断面積測定:0.6〜8keVで1電子及び2電子移行反応断面積を,他種イオンとの比較の参考とするため測定を実施した。概ね10keV以上の高エネルギー領域での他のグループの文献値とは一致したが,低エネルギーの奥野らの2電子移行反応断面積は過大評価されていることが分かった。2電子移行反応断面積は概ねこのエネルギー領域ではエネルギー依存性が少ないことも分かった。 3.Ne^<2-6+>イオン-CH_4,C_2H_2,C_2H_4,C_2H_6分子衝突系における電荷移行反応断面積測定:イオン源の構造上の問題から,加速電圧2kVでのみ測定を行った。4電子移行反応断面積まで解析ができた。1電子移行反応断面積や全電荷移行断面積は,入射イオン価数や標的分子のイオン化ポテンシャルに対する我々の過去のスケーリング則の近傍にやはり収まることが分かった。今後,C_3H_m(m=4,6,8)との衝突系やアルゴンの多価イオン,より高電離のネオンイオンに対する断面積測定を順次実施していく予定である。
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