1997 Fiscal Year Annual Research Report
桜島火山の活動により放出された水銀の環境動態に関する研究
Project/Area Number |
09640582
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
冨安 卓滋 鹿児島大学, 理学部, 助手 (60217552)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井村 隆介 鹿児島大学, 理学部, 講師 (40284864)
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Keywords | 土壌中水銀 / 垂直分布 / 桜島火山 |
Research Abstract |
桜島をほぼ一周するように5採取地点を設定した。各地点で、降下火山灰の堆積状況を詳細に記録した後、表層から深度約1mまで、1cmごとに試料を採取した。採取した試料はチャック付きビニール袋にいれて、実験室に持ち帰り、葉、根、石などを取り除き、総水銀濃度、水分含有量、有機物含有量および、粒度分布を測定した。 桜島の土壌では、火山活動の活発な時期に降下した火山灰の堆積によって形成した層(A層)と、火山活動の穏やかな時期に形成した層(B層)とを区別することは容易であった。 5地点より採取された約500検体について測定を行ったところ、試料中の総水銀濃度は、0.42-27.9μg kg^<-1>の範囲にあり、B層の水銀濃度に比べてA層の濃度がかなり低いことがわかった。水分含有量、有機物含有量は、それぞれ、2.1-22%、および、0.0-4.0%であり、やはりこれらの含有量もA層に比べてB層が多かった。そこで、これらの相互関係について検討したところ、試料を採取したいずれの地点においても、水銀濃度-水分含有量、水銀濃度-有機物含有量および水分含有量-有機物含有量の間に正の相関が見い出された。粒度分布の測定も行ったが、これについては得られた中央粒径値(2.2-3.6φ)と水銀濃度の間には相関は見られなかった。 現在得られている結果からは、高温下で水銀を完全に放出した火山灰が、降下中に吸着する水銀は比較的微量であり、桜島土壌への水銀の供給は火山灰以外によるものがかなりのウェートを占めていることが示唆されている。また、水銀濃度と有機物含有量、水分含有量との正の相関は極めて興味深い結果であり、水銀の環境中の挙動を探る上で、重要な手がかりとなることが期待される。今後、桜島火山の影響を受けていない地点より試料を採取し、桜島の結果と比較すること、また、試料中水銀の分別定量を行うことにより、さらに興味深い知見が得られると考えられる。
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